2021年10月11日(月)、ドラフト会議が開催された。
横浜DeNAは本指名で6名、育成指名で3名の計9名を指名した。この指名結果について、指名選手の特徴や指名意図の考察などをまとめていこう。
- 1位 小園 健太(投・市和歌山高)
- 2位 徳山 壮磨(投・早稲田大)
- 3位 粟飯原 龍之介(遊・東京学館)
- 4位 三浦 銀次(投・法政大)
- 5位 深沢 鳳介(投・専大松戸)
- 6位 梶原 昂希(外・神奈川大)
- 育成1位 村川 凪(外・徳島IS)
- 育成2位 東出 直也(捕・小松大谷高)
- 育成3位 大橋 武尊(外・茨城AP)
- 総評
1位 小園 健太(投・市和歌山高)
毎年のように指名公言無しの隠密ドラフトのDeNA。例年の指名の動きからして1本釣りの予想が多かったが、今年は大方の予想を裏切った形で高校生BIG3の1人、小園健太を入札指名した。
小園は184cmと長身で最速152kmの大型右腕。直球の球威があり変化球が多彩でキレもあり、制球もまとまっていてテンポも良い。癖の少ないフォームなのでプロで修正する必要も無く、早期にローテ入りが期待できる完成度の高い投手だ。
DeNAは高校生投手の伸び悩みが目立っていて、なかなか先発ローテに高校生が入ってこれない状態が続いている。京山、阪口らがアピールしているがまだまだ少ない。そこへ完成度の高い小園が入ってくるのは、戦力的にも世代のバランス的にも大きなプラスになる。
ドラ1とはいえ高卒1年目なので即戦力と考えるのは早計だが、2年目から1軍ローテに入ってくるような活躍を期待したい。
2位 徳山 壮磨(投・早稲田大)
DeNAは2位指名のトップバッターで、言わばドラフト1位の次の13番目の選手を指名することができた。そこで指名したのが早稲田大の右腕、徳山だ。
徳山は身長183cm・最速151kmで肩肘を柔らかく使った投球が特徴だ。直球のノビ良く変化球も多彩で、特に変化球のキレが良く三振を獲れるタイプの先発だ。徳山は春の投球はやや打ち込まれて調子が良くなかったが、この秋に調子を上げてきていて、それをDeNAのスカウトがチェックしていた。
現状で不安のある先発投手陣へのテコ入れの指名であることは明白で、即戦力として期待しての指名だろう。
春期キャンプでしっかりアピールして、開幕からローテ入りしてくれることを期待したい。
3位 粟飯原 龍之介(遊・東京学館)
3位では身体能力高い高校生遊撃手の粟飯原を指名した。粟飯原は身長182cm85kgで遊撃手としては大型だが、50m5秒9の脚力を備えて、肩も投手として137kmを記録するなど強肩だ。右投げ左打ちの身体能力高い大型遊撃手というと、森敬斗と良く似ているタイプと言える。
森と同じようなタイプの遊撃手を指名した理由は、森を来年から1軍出場がメインになるためだと考えられる。これまで2軍では森がいる時はずっと森を遊撃手で起用していたが、その森が1軍に上がれば遊撃手の位置がポッカリ穴が空くことになる。
そこへ粟飯原が入り、遊撃手で育成していくということだろう。
いずれは森と1軍遊撃手のレギュラーを競う立場になることを期待したい。
4位 三浦 銀次(投・法政大)
4位指名では、ここでも更に投手を指名してきた。先発の即戦力として期待できる法政大右腕の三浦だ。
三浦は身長175cm 最速150kmで右腕としては低身長ながら制球力に優れている。変化球を織り混ぜ、緩急を使ってコーナーに投げ分けることができるのが武器だ。
大学1年から先発として投げてきており、先発の実績豊富で投球術が良いのも特徴だ。
小園、徳山に続いての先発3人目ということになり、意図としては先発強化というのがはっきりしている。徳山と共に来年の先発ローテを争い早期に1軍戦力となることを期待したい。
5位 深沢 鳳介(投・専大松戸)
ここまで先発右腕中心の指名が続いてきたが、5位指名でも右腕の深沢を指名した。
深沢は最速144kmながら右のサイドハンドで、球速以上の球威が魅力だ。スライダー、カーブ、シュートなど多彩な変化球を扱い奪三振能力が高い。
サイドと言うことでリリーフとして考えられるが、制球良く左打者を苦にしない先発としても期待できる。
まずは2軍で長いイニングを投げて経験を積み、その上で先発かリリーフかで適性を見ていくことになりそうだ。
6位 梶原 昂希(外・神奈川大)
支配下での最後の指名となったのが、身体能力に優れた左打ちの大型外野手の梶原だ。
梶原は188cm83kgと大型の体格ながら、50m 5秒8の俊足で、打撃もパワーを活かした長打を量産する。蝦名と似ているタイプで、左打ちの蝦名と言うのが合いそうだ。
下位指名まで残っていたのは粗があり確実性に欠ける点があることだと思われるが、逆に安定した打撃を身につければ身体能力の高いセンターで早期に1軍戦力となれるだろう。
DeNAの外野手はレギュラーが固定していて、控えのメンバーもどうにかして1軍に残ろうとアピールして競争率が高い。そこに梶原が割って入っていければ、外野の戦力を更に厚くすることができるため、まずは競争できるだけの結果を2軍で残すことを期待したい。
育成1位 村川 凪(外・徳島IS)
育成指名ではDeNAは初めて外野手を指名した。これは、これまでのDeNAの指名方針からの転換が見えた指名と言える。
その育成1位で指名したのが、大卒1年目 23歳の俊足の外野手の村川だ。村川は50m5秒5とプロでもおそらくトップのタイムを残すほどの俊足で、今年の四国リーグでは63試合に出場し、40盗塁を記録した。盗塁成功率は80%に達するなどまさに足のスペシャリストで、一芸枠としての指名だろう。
打撃を磨いていけば、支配下登録の可能性は十分にあるぐらい良い足を持っている。
育成2位 東出 直也(捕・小松大谷高)
今年は支配下で捕手を指名せず、このまま捕手指名無しで終わるかと思われた時に指名されたのが、高校生捕手の東出だ。
東出は注目度こそ低いものの、今年の甲子園で3安打猛打賞を記録した打撃や、2度も盗塁を刺すなど守備面でも大きな活躍をしている。打撃・2塁送球・フットワークなど攻守で評価できる点がありバランスの良い捕手だ。
170cm68kgとまだまだ小柄な体格だが、逆にここからしっかり鍛えて身体を大きくして、成績も伸ばしていけば、3年後には支配下登録を狙える可能性は十分ある。
育成3位 大橋 武尊(外・茨城AP)
育成枠最後の指名は投手ではなく外野手だった。初めての育成外野手指名が2人という異例の指名となったが、その最後に指名されたのが高卒1年目の独立リーグ外野手の大橋だ。
大橋も足が速く50m5秒8を記録し、その足を活かした守備範囲の広さが武器になっている。
打撃面はまだまだ力不足なところはあるが、守備の良いセンターなので打撃を鍛えることができれば、大きく飛躍して支配下登録を掴む可能性もあるだろう。
以上が2021年ドラフト会議で横浜DeNAが指名した選手達だ。
総評
全体としては投手に重点を置いた指名で、小園を引き当てた後も、徳山、三浦、深沢と高校生・大学生を重ねて指名してきたことで投手のケアをしっかり行ったと言える。
1軍投手陣は今永や東が復帰してきて、外国人のロメロも好調で立ち直りつつあるが、そこに更に徳山・三浦らが加われば先発投手はかなり充実するだろう。
こうなると何人かリリーフでの起用もあり得そうだが、それによってリリーフ陣の負担軽減も見込めそうだ。
野手に関しては来年からすぐ1軍で結果を残せる可能性は低いドラフトになったが、粟飯原も梶原もファームで育てがいのある野手で、先を見据えた指名として期待できる。
育成外野手の村川・大橋や、育成捕手の東出もそれぞれ特徴があり面白みのある選手達で、彼らの成長も楽しみだ。
今回の指名では捕手や、早期に1軍戦力として見込めそうな野手指名が無かった。捕手陣は伊藤光が手術したこともあり、来年も不安定かつ打撃低調な状態が続くことが懸念される。これを補うには現状だと山本の台頭を願う他なく、場合によっては益子を上げてくる可能性もありそうだ。しかし来年も今年と変わらない捕手陣の状態だと、来年ドラフトでは捕手指名はかなり優先度が高くなるだろう。
捕手本指名無しについては別記事で考察。
【横浜DeNA】本指名で捕手を指名しなかった意図考察 - データで語るドラフト・育成論
内野陣も宮崎のFA権取得や大和の高齢化など不安材料がある。ドラフトではそのケアを行う指名はされなかったため、宮崎の引き留めは優先度がかなり高い。ショートは森がレギュラー争いに入ってくるような活躍を期待したいところだ。