データで語るドラフト・育成論

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【プロ野球2019】ヤクルトの戦力分析と今後の予想

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オールスターも終わり、各球団これから後半戦を迎える。

そこで、現時点での各球団の戦力分析を行ってみた。

今回は東京ヤクルトスワローズについてまとめてみた。

現時点の成績・評価

序盤は上位進出も先発陣が崩壊。頼みの打線も粗く安定せず前半戦最下位へ

昨年は好打者が並び安定した打撃力が光り、打ち勝つ野球でリーグ2位となっていたが、今年は昨年からガクッと順位を落とし前半戦最下位が確定した。この要因としてまず挙げられるのは先発投手陣が大崩れしたことだろう。昨年も先発陣はあまり良い状態とは言えなかったが、今季は更に悪くなってしまった。チーム内先発で規定投球回に到達しているのは小川1人で、その小川がリーグ全体の規定投球回到達投手の中で唯一の4点台で、1人だけ大きく離れて悪い防御率になっている。ヤクルト内の他の先発陣では小川よりも防御率が低いのは唯一防御率3点台の石川のみになっていて、他の先発では原樹理が4点台後半、高橋奎・高梨・ブキャナンなどに至っては5点台後半以上となっていて大崩れしている状態だ。このため先発QS率もリーグ最下位で、先発防御率は他球団は全て3点台なのにヤクルトのみ5点台。これでは打ち勝つ野球を目指してるといっても、打たれすぎと言えるだろう。

反面リリーフ陣は悪くない状態で、抑えの石山が防御率1点台。そこへ繋ぐ役割のマクガフ・ハフは防御率2点台と安定。この2人はリーグトップのリリーフ登板数でここまで大車輪の活躍をしている。五十嵐も防御率2点台で安定。近藤が防御率3点台、梅野が5点台とここはやや状態が良くないが、それでも現時点で30試合以上投げていて先発陣が崩れた時にカバーをよく頑張っていると言えるだろう。ただリリーフ陣は彼ら以外の風張・大下・中尾・久保らの防御率がガクンと悪く、仮にマクガフやハフが不調や故障離脱などがあれば崩壊する恐れもある。現状綱渡りの状態と言えるだろう。

ヤクルトの強みである打線だが、今年は昨年と比べて粗さが目立つ。というのも昨年チーム打率はリーグトップで打線の繋がりが良く一気に大量点も取れる打線だったが、今年はチーム打率がなんとリーグワーストで、真逆の状態になっている。本塁打数はリーグ3位、チームOPSもリーグ3位と辛うじて上位の方ではあるが、打撃を売りにしているチームとはもはや言えなくなってきているだろう。こうなった理由はベテランの衰えや離脱というのがはっきりしていて、昨年オフから危惧していたことが現実になってしまった。坂口・大引・川端らの打撃低迷。畠山の怪我。バレンティンも怪我による出場機会減など、ベテラン勢が一気に調子を落としてしまった。ヤクルトは怪我に泣くチームといわれるが、これだけベテランを起用していれば怪我人も出てきて当然と言えるし、お祓い云々の問題ではなく管理の問題だろう。光明としては高卒2年目の村上が大活躍で、チーム内では山田哲に次ぐ本塁打数を挙げている。だが彼1人の躍進だけではチーム打撃の悪化に歯止めがかかってないのが現状と言えるだろう。

このように投手は昨年より更に悪化し、打撃陣もベテラン勢の衰えで悪化している現状があって前半戦最下位という結果に終わった。これは編成面での失敗の部分が大きく、オフには力を入れて立て直す必要が出てくるだろう。

 

ヤクルトの戦力層

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【先発】

安定してるのは小川・石川のみ。世代交代待ったなしの状況で若手の台頭が弱い

ヤクルト先発陣の今年の惨状を考えると、1軍ローテに入ってこれる新たな戦力の台頭が一刻も早く求められる。というのも、このままいけば現時点よりも成績が悪化する可能性があり、まさに予断を許さない状態になってきているからだ。1軍ローテで現状安定しているのは小川と石川の2人。しかし小川がもうすぐ30歳、石川に至っては来年40歳を迎える。先発が厳しい状況で更に主力がベテラン・大ベテラン化してきているという状態で、まだ彼ら頼りの現状は昔の三浦頼りの横浜を彷彿とさせる。20代は原・高梨・高橋奎が現状の1軍先発として辛うじて考えられるが、その後に続けそうな投手が見あたらない。ブキャナンや寺原ももう30代で、現在あまり良い成績とはいえない彼らでさえ、まだローテの頭数に入ってきてる現状は危機的状況と言えるだろう。こうなった状況を考えると、ここ数年のヤクルトは先発陣を軽視し過ぎたと言わざるを得ない。大卒・社会人投手の失敗からきたロマンに偏ったドラフト、高卒投手のリリーフ転向など、先発の層がどんどん薄くなっていく編成・育成になってしまっていた。シーズン後半戦で立て直したいところだが、そんな付け焼刃的な改善だけではどうしようもない状態で、オフに抜本的な先発強化が求められるだろう。

 

【中継ぎ・抑え】

1軍主力は盤石も、全体的に見ると不安な点が多く綱渡り状態

中継ぎのハフ、マクガフから抑えの石山に繋ぐ継投が確立されてきており、この勝ち継投は安定してると言えるだろう。またベテランの五十嵐も安定、近藤や梅野はやや打たれることがあるが、登板数多く必要な存在になっている。上記リリーフ陣が現状の主力で他球団リリーフと比較しても悪くはない。ただ不安な点を挙げるとすると、この主力リリーフ陣に穴が開いた時の代役がなかなかいないことだ。今年は風張・大下・中尾・久保らも1軍で10試合以上投げているが、彼らの成績が5~8点台と正直酷い状態でなかなか1軍戦力として考えづらい。主力が持ちこたえてくれるなら心配は無いが、後半戦は投手陣にとって苦しい時期になってくるため、離脱者が1、2人出る可能性もある。そうなった場合の対応ができるかどうか不安なところだろう。2軍から中澤や坂本光らが上がってきて欲しいところだ。

 

【捕手】

中村悠が開幕から安定して問題無し。若手の古賀や松本も1軍で試せている

中村悠平がここ数年ずっと正捕手を任されていて、今年も開幕から盤石の態勢だ。打撃面でもOPS.764という成績で捕手としては上々の結果を残していて、他の捕手と比べても大きく差をつけていると言えるだろう。ただそろそろ中村だけでなく若手捕手も徐々に試していきたいところだ。今までは井野や西田などを控えとして起用していたが、今年は古賀や松本といった若手も1軍に上がる機会があり、スタメンマスクを被った。まだ1軍に定着できる状態ではないが、徐々に起用機会を増やしていき捕手陣をより盤石な体勢にしていけると良いだろう。

 

内野手

高卒2年目の村上が大躍進!セカンド山田も盤石だが、三塁・遊撃は固定できず

今年のヤクルトにとって嬉しい誤算は、高卒2年目の村上が早くも1軍レギュラーとなり、4番を任せられるスラッガーに育っているところだろう。近年のNPBの歴史を見ても、高卒2年目でここまで活躍してるのは西武の森友哉大谷翔平ぐらいだろう。しかも村上は現時点でその森・大谷を上回る本塁打数で、シーズン30本以上も見えてきている。ベテラン勢が占めていたヤクルトレギュラー陣の中に、次世代を担うスラッガーが急遽現れてくれた。その村上は主にファーストで起用されていて、昨年まで坂口がメインで起用されていたところにピッタリとハマった形だ。セカンドの山田に関しては今年も心配する必要のない活躍で、ヤクルト野手陣の中でも群を抜けて好成績になっている。唯一懸念はトリプルスリーを達成できるかどうか、というぐらいだろう。

この盤石なファースト、セカンドに対して、サード、ショートが今年は固定できず弱点になっている。サードは村上が守ることもあるが、村上がファーストの時は太田や大引がスタメンに出ている。しかし太田や大引の守備はともかく打撃力がサードとしてはかなり物足りない状態で、固定するに相応しい選手がいない状態だ。村上をサードで固定する方法もあるが、村上のサード守備はエラーが多く厳しい状態で、首脳陣としてもサードで我慢して育てたい思惑もあっただろうがファースト起用に落ち着いている。そのため現状サードが固定できない状態だ。ショートに関しては昨年までレギュラーだった西浦が、今年は5月頃から怪我で苦しみ2か月近く登録抹消されていた。その間奥村、太田、廣岡らが主に起用されて急場を凌いだ形だ。打撃面ではそこまで問題はなかったが、守備面ではショートもエラーが多く西浦が戻ってくるまで不安定な状態になっていた。7月から西浦が復帰してきたためこれで固定できる可能性はあり、守備の不安も無くなりそうだが、層の薄さを露呈したともいえるだろう。

 

【外野手・指名打者

バレンティン・青木・雄平の固定外野陣だが、じわじわと世代交代の必要性が

昨年から固定のレギュラー外野陣でヤクルト打線の主力とも言える存在の3人は今年も結果を残している。バレンティンが5月にコンディション不良で離脱することもあったが、2週間で復帰してきてそこまで大きな穴とはならなかった。センター青木は37歳だが打撃面で衰えなくOPS.800台の打てるセンターとして結果残している。雄平に関しても昨年から成績が落ちているものの開幕からスタメン固定が多い。と、一見問題無さそうに見えるが、実際のところは世代交代を本格的に考えねばならない状態になりつつあるだろう。3人とも打撃はまだ結果を残していると言える方だが、守備面は明らかに衰えが見えてきた。青木はセンターの守備範囲が大分狭くなってきていて、今年はレフトで起用されることもあり、信頼度が落ちている。雄平の守備範囲も狭く、そろそろ守備固めが必要だろう。全員35歳以上でこれから更に厳しくなってくる可能性が高く、ここまできて、まだ若手が外野の1つでもレギュラー奪取できてないのは辛いところだ。期待できそうな若手では昨年ドラ2の大卒ルーキーの中山が打撃で結果を残していて、現在バレンティンの代役のレフトで起用されている。センターは山崎・塩見らを試していて、山崎は守備範囲の広いセンターで青木や雄平の後釜として期待されている。このように期待できる若手がいないわけではないが、まだそこまで多くないのと、打撃面含めて見るとまだベテラン勢に及ばないと判断されているのだろう。しかし確実に世代交代の時は迫っており、その準備はしておく必要がありそうだ。

 

今後の展開予想

CS争いに食い込むには投手陣の立て直しが不可欠だが、抜本的改革がオフに必要

Aクラスまでは6ゲーム差で、後半戦の頑張り次第ではまだ可能性を残しているといえるだろう。そのためには先発の立て直しが不可欠なのは間違いない。現状大型連敗はあっても大型連勝できない状態で、それは先発6枚が揃わず不安定になっている点に尽きる。仮に立て直しに成功したとしても、現状の先発陣は層が薄すぎるためオフに補強は不可欠で、そのことを球団の編成は考えなくてはならないだろう。今の順位に居るのは単なる運の悪さや故障選手の多さではなく、先発の補強と育成を怠ってきた編成の失敗であることを強く認識しなければならない。野手陣もまだベテラン頼りの気が強く、このまま若手が出てこなければ、数年後には先発と同様の惨状になる可能性もある。今でさえまだ底では無く、もっともっと落ちていく可能性があるのだ。大変厳しい言い方になってしまったが、12球団の中でも最も危機意識を持って立て直しをする必要があるチームだ。

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