球春到来!
2019年のプロ野球春季キャンプが始まり、いよいよシーズンへ向けて各球団がスタートした。今年はどんなシーズンになるのか期待に胸を膨らませているファンも多いだろう。そこで各球団のオフの動きや既存戦力で予想される変化から、戦力分析と順位予想を行ってみた。今回は埼玉西武ライオンズの記事だ。
主な戦力補強・流出
【ドラフト】
1位 松本 航 投手 日本体育大 ☆
2位 渡邉勇太朗 投手 浦和学院高
3位 山野辺翔 内野手 三菱自動車岡崎
4位 粟津凱士 投手 東日本国際大
5位 牧野翔矢 捕手 遊学館高
6位 森脇亮介 投手 セガサミー
7位 佐藤龍世 内野手 富士大
【育成指名】
1位 東野 葵 投手 日本経済大
2位 大窪士夢 投手 北海高
3位 中熊大智 捕手 徳山大
ドラフトについての評価・考察は別記事に詳しく記載。
【FA・トレード・外国人補強】
獲得
ザック・ニール 投手
内海 哲也 投手
廖 任磊 投手
流出
菊池 雄星 投手
浅村 栄斗 内野手
炭谷 銀二朗 捕手
松井 稼頭央 外野手
ニール・ワグナー 投手
ブライアン・ウルフ 投手
菊池雄星メジャー挑戦、浅村栄斗・炭谷銀二朗FA移籍と主力流出
昨年リーグ優勝を果たした西武だが、オフはその優勝の立役者の投打の主力が流出するという非常に痛い結果に終わった。
菊池雄星は昨年先発で23試合 163回2/3を投げ、14勝4敗 防御率3.08とチーム内の先発で最も安定した投球ができていた。それ以前から菊池はずっと西武の先発ローテを任されてきた投手で、チームのエースと言っても過言ではない成績を残してきており、チームにとって実力的にも精神的にも大きな投手が流出することとなってしまった。ポスティングによるメジャー挑戦なので、球団への感謝を形に表しての移籍と言えるだろう。菊池のことを応援している西武ファンは多いと思われるので、メジャーでの活躍を期待している。
浅村栄斗は長年西武のセカンドを守ってきた選手で、セカンドという守備型のポジションながら打撃面での素晴らしい活躍をしてきた。昨年は全試合出場で640打席、打率.310 32本塁打 OPS.910という成績を残した。バリーグ打率5位、本塁打数3位で、紛れも無くバリーグ屈指のスラッガーと言えるだろう。その浅村がFA権を行使し楽天への移籍が決定した。浅村の代わりになる選手はチーム内はおろか球界を見渡してもごく少数で、西武としては戦力ダウンは避けられない。代わりにセカンドに入る選手の候補としては外崎か、ルーキーの山野辺が候補になってくるが、彼らには浅村の代わりを期待するより、まずセカンドでしっかりレギュラーを獲ることから求めていくべきだろう。
炭谷は西武で2011~2017年まで正捕手を務めてきた選手で、昨年は森友哉の台頭で2番手捕手になったが、守備力やリーダーシップの面でまだまだ評価の高い捕手だ。その実績と守備力を評価され巨人がFAで獲得した。西武としては森友哉が捕手で1人立ちするところで戦力的な痛手というのは少なさそうだが、実績のある捕手の移籍で精神的な面での痛手の方が大きいだろう。今年は森を正捕手に、2番手を岡田が務めることで乗り切る形になりそうだ。
投打の主力と実績ある捕手が流出したことで、この戦力ダウンをどう埋めていくかが今年の西武の課題になってくるだろう。
炭谷の人的補償で巨人の実績ある左腕・内海を獲得
FA流出による痛手は大きかったが、その代わりに思いもかけない選手の獲得に成功した。巨人へFA移籍した炭谷の人的補償として内海を獲得することができた。内海は巨人一筋15年の大ベテランで、昨年は先発で82回を投げ5勝5敗 防御率4.17の成績を残した。まだ先発ローテに入る力があり、西武としては菊池雄星が抜けたが代わりの即戦力左腕の獲得ができたと言えるだろう。内海は36歳でプロとしてはもう長く活躍することは難しくなってきたが、あと1、2年先発で結果を残してもらい、その間に西武は次の先発ローテ要員の準備に取り掛かりたいところだ。技術だけでなく人柄などの評判も高く、西武の若手投手陣に良い影響を与えることも期待したい。
制球力高く安定した新外国人先発ザック・ニールの獲得
西武は昨年オフ、外国人のワグナーとウルフを放出した。ウルフは先発で、ワグナーはリリーフで起用されていたが、結果を残すことができなかった。これにより西武の外国人はマーティン、カスティーヨ、ヒース、郭、メヒアの5名となったが、カスティーヨ、ヒース、マーティンの3人がリリーフで先発が郭のみとなり、先発が手薄になった。ただでさえ菊池雄星が移籍したことで先発が手薄になっているため、新外国人の先発補強は必須と言えるだろう。そこで西武はニールを獲得した。
ニールは昨年MLBでは1試合に登板し1回 防御率9.00の成績だった。3Aでは32試合に登板(PCL,IL合算)、14試合に先発し101回を投げ、防御率4.63の成績を残した。3Aでもやや防御率が高めだが、与四球率が1.33という低さで制球がとても安定している。奪三振率は6.05とまずまずで打たせて取るタイプの投手と言えるだろう。制球の安定を考えると大崩れしにくいタイプと言えそうだ。ニールが昨年のウルフ以上の結果を残してローテを守ってくれれば、菊池の移籍の影響も少なくなるだろう。
西武の外国人補強はニールのみになりそうで、1軍枠を6人の外国人で争う形になりそうだが、西武は昨年投手陣の成績が悪かったため、レベルの高い競争をしてもらいたいところだ。ニールにも先発でシーズン通してローテを守る活躍を期待されているだろう。
既存戦力の変化
浅村が去っても山川・森・外崎・源田ら20代の主力が中心の山賊打線
昨年西武は山賊打線の異名をつけられるほど、強力な打線で得点数は2位のソフトバンクと100点差以上離してのダントツだった。この強力打線でリーグ優勝を掴んだと言っても良いぐらいで、スタメンの6名がOPS.800以上、2名がOPS.700以上という隙の無い打線になっていた。浅村が抜けたとはいえ、この打線の他のメンバーはまだ残っており、特に20代の山川・森・外崎・源田らはこれからも成長を期待できる若い選手達だ。彼らがこれからの西武の打線を引っ張る存在になって、結果を残していけばまだまだ西武の山賊打線は衰えないだろう。ここに新たに若い選手が2軍から上がって活躍してくれば次の世代にも繋ぐ打線をつくることができる。西武の若手では山田遥・金子一・呉などが昨年1軍で何試合か起用されていて、まだ1軍でずっと起用されるほどの結果を残せてはいないが、1軍戦力として成長してくることが期待されているだろう。新たな20代の選手たちで、新しい山賊打線を作り上げて欲しいものだ。
昨年リーグワーストの投手陣。補強は行ったが既存戦力の成長も不可欠
山賊打線の異名の下、昨年リーグ優勝を勝ち取ったが逆に投手陣の成績はリーグワーストだった。先発防御率がリーグ5位・リリーフ防御率がリーグ最下位で共に悪く、打線のチームになったとはいえ、見過ごせない問題だろう。おまけに今年は菊池雄星がおらず投手事情は更に厳しくなる。外国人のニールや人的補償の内海、そしてドラフト指名の松本・粟津・森脇など、補強面は出来る限りのことをやれたため、あとは既存戦力の底上げにかかってくる。しかし西武の現先発は多和田・今井はまだ20代で若いものの、榎田・十亀はもう30代で数年後には世代交代が必要だ。彼らの後継者の準備もしなければならないが、昨年投げた先発では他に主だった若手がローテに入ってこなかった。西武には高橋光・高木勇・伊藤翔・佐野・本田・齋藤大・郭などが昨年1度は1軍先発で登板してるが、全員ローテ定着に至っていない。だが既存戦力では彼らが次の先発ローテ候補として出てこないと厳しいだろう。今年は1人でも多くの若手が先発で活躍して欲しいものだ。
秋山・中村剛・栗山らの後継者も要準備が必要。期待できそうな若手はいるが…
西武の秋山が今シーズン終了後にメジャー挑戦する可能性が出てきている。仮にメジャーとなると西武の主力からまた1人抜けてしまうことになるだろう。他にも中村剛や栗山はもう35歳で、1軍主力としてあと何年活躍できるか難しく、彼らにも後継者が必要になってくる。今年だけでなく来年以降も西武は選手の起用が大変になってくるだろう。
秋山・栗山2人の外野手の後継者としては愛斗・鈴木将・高木渉らが候補に挙がってきそうだ。愛斗は2軍でチーム最多の本塁打数(13本)を打っていて打力があり、高木渉は育成選手だがOPS.796の成績を残し打撃面で2軍野手陣の群を抜いている。鈴木将は打撃での結果はあまり残せなかったが、選球眼の良さや守備面での評価の高さがある。彼らが今年2軍で確固たる結果を残し、1軍にも起用されるようになってくれば、秋山・栗山の後釜として考えることができるだろう。
中村剛の後継者としては山田遥が期待できそうな選手になってきている。打率.264 8本 OPS.723という成績で、長打力を活かした打撃ができる選手だ。他にも選球眼の良い呉や守備で評価の高い金子一輝もいて、中村剛の後釜のサードや浅村が抜けたセカンドを彼らが奪えるようになってくると、内野陣の戦力ダウンは少なくなるだろう。
西武の若手野手にはこうして期待できる選手が多いため、彼らをしっかり育てあげて次の世代に繋げたいところだ。
予想レギュラー
先発:多和田・榎田・十亀・ニール・内海・松本
中継ぎ:平井・マーティン・野田・増田・伊藤翔・森脇
抑え:ヒース
※赤字は補強選手、緑字はドラフト指名選手
先発は昨年100イニング以上投げた多和田・榎田・十亀の3人を残して、新外国人のニールと、人的補償の内海、ドラフト1位の松本が入る形を考えた。菊池やウルフがいなくなったことを考えると、新戦力の3人には何としても結果を残してもらいたいところだ。先発候補は他にも今井・カスティーヨ・高橋光・粟津らがいるが、他にも先発で結果を残せる投手が出てこないと今シーズンを乗り切るのは難しくなってくるだろう。
リリーフは昨年後半に勝ち継投として定着した平井・マーティン・ヒースが今年も同じ役割で起用されそうだ。他には登板数の多かった野田・増田と、ルーキーの森脇が入ってくると考えた。西武のリリーフには他に武隈・小石・松本らがいるが、昨年は安定感に欠いたことでリリーフ陣が厳しい成績となった。今年はしっかり結果を残して盤石なリリーフ陣にして、打線を援護したいところだ。
【野手】
捕手:森
一塁:山川
二塁:外崎
遊撃:源田
三塁:中村剛
左翼:栗山
中堅:秋山
右翼:金子侑
指名:メヒア
※赤字は補強選手。緑字はドラフト指名選手
野手陣はセカンドの浅村が抜けたが、ここに昨年サードやライトを守っていた外崎が入ると考えた。ライトには昨年レフトとライトを守っていた金子侑が定着することになるだろう。 森は昨年捕手と指名打者を交互に起用されるような形だったが、炭谷の移籍で捕手に定着となりそうだ。指名打者もこれでメヒアが定着することになるだろう。選手の配置はこうなり、浅村が抜けたとはいえ他の主なメンバーは変わらない起用ができそうである。しかし守備位置を柔軟に変えていた昨年と異なり、今年は固定起用が多くなりそうでそれによる選手の疲労や怪我がやや心配になってくるだろう。なのでこのレギュラーメンバー以外にも若手が台頭してくることが必要になってくる。
セカンドにはルーキーの山野辺や水口・呉などが1軍戦力となり、外崎をサードや外野でも起用しやすくして、サードには呉・山田遥が台頭してくることで中村剛を指名打者にまわし。外野も愛斗がレフトに入ることで栗山を指名打者で起用しやすくするなど、ベテラン勢の負担軽減をしつつ次の世代の台頭を期待したいところだ。この辺りは采配面がとても重要になってくるだろう。
順位予想
上記の戦力分析を踏まえて西武の今年の順位を予想する。
4位
戦力流出の影響は大きく、今年は立て直しのシーズンになりそうだ
昨年優勝した球団だが今年はBクラスに落ちると考えた。理由としてはやはり菊池・浅村ら主力の流出が大きい。だがそれ以外にも、投手陣の整備が難しくなかなか若手が伸びてこない現状などもあり、自前の戦力の立て直しが必要なシーズンと言えるだろう。幸いにも打線はレギュラーに20代の選手が多く、2軍から上がってきそうな若手も多い。山賊打線もこうした若手の台頭でリニューアルした形になり、また他球団を脅かす強さを見せて欲しいところだ。投手陣に関しては正念場で立て直しに本腰を入れないと、せっかくの打線を見殺しにすることになってしまう。チーム全体で取り組んでいかねばならない課題になってくるだろう。
上がり目
期待できる若手野手が多数。山賊打線は衰えることなく新たなステージへ
下がり目
1軍ローテに入れない投手が多く、若手が出てこないと昨年以上に厳しい投壊も…
【12球団順位予想記事まとめ】