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【プロ野球】2軍の帝王から考える2軍の意味【考察】

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よく言われる2軍の帝王という存在…。何故こういう選手が出てくるのか。

 

2軍の帝王とは?

 プロ野球の世界では1軍であまり活躍できない選手について、よく「2軍の帝王」と揶揄されることがあります。これはいったい何を意味しているのかということですが、つまり2軍では帝王と言えるほど圧倒的な成績を残している選手のことです。

例えば投手なら防御率1点台とか、打者なら打率3割・2桁本塁打など、そこまで結果を残せてれば、1軍昇格は間違いなしというぐらいの活躍ぶりの選手。

こう見ると一見、良い状態のようにも見えますが、彼らが2軍の帝王と呼ばれる所以はむしろこの先に意味が込められています。

圧倒的な成績を残して1軍に昇格した時、まるで人が変わったかのように抑えられない、打てない選手になってしまうということです。そのため2軍の帝王とは「2軍で圧倒的な成績を残せても、1軍で全然結果を残せていない選手」のことを指していて、正直なところ蔑称として使われることが多いでしょう。

 

 

何故2軍の帝王になってしまうのか?

こうした選手たちは何故、2軍の帝王になってしまうのでしょうか?

考えられる理由は色々ありますが、つまるところ1軍に対応できていないということです。何故1軍に対応できていないのか、おそらく以下の理由があると思います。

 

①1軍と2軍のレベルの違いについていけない

当たり前のことですが、1軍と2軍では野球のレベルが違います。

なので2軍でいくら結果を残しててもそれはあくまで2軍の中だけの結果で、1軍はもっと厳しい環境になり、その環境に適応できていないので結果を残せないということです。

ここから脱却するには、本人が1軍に対応できるよう努力していくしかないでしょう。

1軍で結果を残せなかったとしても、その原因や何が足りなかったのかを学ぶことはできます。そうすれば2軍に戻ったとしても、今度は1軍を想定して練習や実戦に取り組むことができます。こうして次の1軍昇格で結果を残しやすくなるというように、試行錯誤を繰り返していければ1軍で結果を残すことも可能になると思います。

 

 

②1軍は相手をよく研究するため、弱点が見抜かれている

1軍と2軍での大きな違いであるのが、相手チームへの研究です。

1軍はスコアラーを派遣して相手の投手や打者のクセや弱点などを見抜き、それを作戦に取り入れることは日常茶飯事でやっています。

例えば新外国人などにありがちなのが、オープン戦までは打ちまくってた選手が、開幕すると同時に全く打てなくなるという現象です。

これは大半のケースは、相手チームに弱点を見抜かれていたということです。

キャンプやオープン戦ではいわゆる泳がされていた状態で、その間に敵チームのスコアラーがしっかりと弱点を見抜いておき、開幕まで好きなように打たせておく。

そして結果が最も大事なペナントレースが開幕したと同時に、弱点の部分を重点的に攻めて全く打てなくする。

これは選手本人にとっても、今まで好きなゾーンで打てていたのに、そこに全然投げてこなくて苦手なゾーンばかりになるのですから、面食らってしまうでしょう。心理的ダメージも大きいと思います。

似たようなケースは1軍と2軍でも発生しやすいでしょう。2軍の試合にスコアラーを派遣して予め情報を収集しておき、1軍に上がるまではむしろ好きに打たせておきながら、1軍に昇格したら苦手なところを徹底的に攻める、という作戦です。

これらは作戦の1つで卑怯でも何でもなく、プロの世界ではこういう情報戦の中でも勝ち上がっていくだけの日々の成長が求められます。

一流と言われている選手たちは、彼らはそうした自分の苦手な部分を克服して結果を残してきた選手たちです。苦手なゾーンを攻められた場合、そこをどう対応するかの技術も1軍には必要ということです。

なので1軍で結果を残せないのは相手の作戦が原因とも言えますが、最終的には本人の問題とも言えますね。

 

 

③2軍でやってきたことと1軍で求められることが違う

①、②はどちらかというと本人の問題だったり責任の部分が大きかったですが、③は球団の問題として挙げました。

例えば元々パワーが弱い選手がいて、2軍では強いスイングをするようにと指導されて、ホームランなど長打を打てる打者になるように取り組んできた選手がいたとします。

そこで結果を残して1軍に上がってきた時に、1軍の首脳陣からはバントや進塁打をしっかり成功させろと言われるようになってしまいました。

この場合、選手からしてみたら今まで2軍でホームランを打つ練習をしていたのに、1軍ではバントを決めなければならないという、やってきたことと全く違うことが求められていることになります。

2軍でバントの練習をあまりやってこなかったのですから、当然1軍の打席でも上手いバントを決めるのは難しくなり、失敗する可能性が高いでしょう。それを1軍首脳陣が見て不合格として2軍に落とす。こういうケースで2軍の帝王と呼ばれてしまうこともあります。

これは球団内での意思統一や連携が上手く行っていない状態で、球団側の責任が強いです。ここまでバラバラなケースというのは少ないかもしれませんが、例えばトレードで移籍した選手が移籍先で活躍するケースもありますし、これも球団の方針や作戦と本人の特性が合うか合わないかの違いになるでしょう。

このような場合は、トレード志願して移籍する方が選手・球団の両方にとって良いのかもしれません。

 

 

④1軍であがってしまい本来の力が出せない

2軍では気持ち良く結果を残せてても、1軍に上がると文字通りあがってしまい、本来の力が出せなくなってしまうというケースもありそうです。

これは技術や指導や環境云々ではなく本人のメンタル面の問題になるので、解決手段が難しいとも言えます。

ただ、プロ野球選手は大半が高校・大学・社会人でそれぞれ結果を残してきた選手たちなので、大なり小なり試合での緊張感というのは経験してきているはずです。ここへきて緊張して結果が出せないという風になるのは、イップスでもない限りはなかなか起こらないでしょう。

無論、イップスを軽く見てはいけないですし、無理に克服させるのではなく適切な治療が必要なのは当然です。ただ、1軍で結果を残せない選手が皆イップスというのは考えにくいですし、イップスではない緊張感だとしたら、試合を経験しながら慣れて緊張をほぐしていくしかないでしょう。

 

 

2軍の成績は意味が無いか?

ここまでは2軍の帝王になってしまう様々な理由についての考察をまとめました。

こうした理由で2軍の帝王になってしまうことについて、よく意見としてあるのが「2軍の成績は意味があるのか?」です。

これは結局のところ、どんな選手でも最終的に1軍で結果を残せていないと意味が無いという考えが込められている意見だと思います。

自分はこの意見については賛否両方の考えを持っています。

まず賛成の考えとしては、結局のところプロ野球選手は1軍で結果を残すことが全てだからです。 結果を残せなければ切られてしまいますが、残していれば年俸も上がって億単位まで稼ぐことができます。

例外として、人格的に非常に問題があってチームに悪影響を与えたり、犯罪行為をするような選手というのはいくら結果を残してても追放しなければならないですが、そういう極端な例を除けば結果が全ての世界です。

つまり2軍でいくら良い結果を残していても、1軍で結果を残せなければ意味が無く、そういう意味で2軍の成績は関係ないというのは正しいでしょう。

 

 

次に否定の考えですが、これは1軍で結果を残すまでの過程で、2軍で結果を残すことも必要という考えです。

先ほど1軍の結果が全てという意見には賛成していましたが、その1軍で結果を残すためにどういう過程を経ていくべきかを考えると、まずは2軍で結果を残すということになるでしょう。

プロの世界の中では入団してから1度も2軍に落ちることなく1軍で活躍し続けている選手もいますが、そういった例外を除けば2軍からスタートしたり、不調時に2軍に落ちて調整する選手が多いです。

彼らは何のために2軍から始めているのか、2軍に落ちているのかということを考えると、それは1軍に上がって結果を残すためです。

2軍の選手たちは自分の課題に専念したり、コーチとも話し合って試行錯誤しながら試合に取り組んでいますが、その課題克服や試行錯誤の成果を見るのが2軍の成績です。

無論、打率や防御率だけでは何に取り組んできたのかは見えにくいですが、「どういう球を投げれるようになり、抑えられるようになったか」、「どういう打球を飛ばせるようになったか」などの中身の部分の成果も成績に反映されます。これらの成果を含んでいると考えれば、2軍成績にも意味を見出すことができるでしょう。

 

 

まとめ

2軍というのは地味で興味を持つ人も少なく、その意味についても重要視しない野球ファンも多いとは思いますが、プロ野球選手の殆どはこの2軍を1度は経験していますし、2軍でやるべきこともあります。今、栄光に輝いている一流の選手も、昔は2軍で練習したり課題を克服していた選手たちばかりです。

近年では2軍だけでなく3軍を導入している球団もありますし、そこから成長して1軍で活躍してる選手も増えてきました。そう考えると年々、2軍・3軍の重要性は増してきていると言えますし、今後面白くなってくる場でもあると思います。

2軍は意味が無いと切り捨てるのではなく、こうした側面に少しでも興味を持ってもらえたら、また1つプロ野球の面白さが増えるかもしれません。 

 

 

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