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【横浜DeNA】球団編成の意図について考察【井納・梶谷・宮崎】

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今オフのDeNA編成の動きについては、ファンの間でも色々と物議を醸すことが多かったですが、ここまでの動きからDeNA編成の意図について考察をまとめてみました。

 

球団編成の意図とは?

多くの戦力流出

今オフはラミレス監督の退任から始まり、ベテランの石川・ロペスの戦力外や井納・梶谷のFA移籍など、ある意味これまでの球団の顔とも言える選手たちが球団を去っていきました。去年の筒香MLB挑戦などの動きから見ても、こういった球団の顔となっていた選手たちがいなくなっていくのは、ファンの中には受け入れがたい人もいると思います。

また、去るだけならまだしも井納と梶谷は巨人へ移籍しましたし、来季戦っていく上で彼らが巨人で活躍すれば、相対的にこちらの優勝が遠のくことになります。にも関わらず、球団はいとも簡単に2人ともFA移籍させたように見えましたし、むしろFA権取得のため1軍登録を長くしたり、宣言残留容認・マネーゲームしない発言など、井納・梶谷に対してFA移籍しやすくする方向へ動いていたのではないかとすら思えます。

こういった球団の動きについて、ファンは「チームを弱体化させるのではないか?」「選手と球団の関係は大丈夫なのか?」などの不安や疑問を持つ人もいるでしょう。実際に自分がそういった不安を少なからず持ちながら、成り行きを見ていました。

 

獲得してきた選手たち

ただ、彼らに代わって残留させた選手、補強してきた選手というのもいます。外国人でオースティンやソトの残留、シャッケルフォード、ロメロ(正式発表待ち)の獲得、戦力外から風張獲得、人的補償での田中俊太、ドラフト上位で即戦力候補の入江、牧の指名など、来年から戦力として期待できそうな選手を獲得してきています。退団する選手たちが多い一方でこうした動きもしています。これらが球団の意図的に行われていた場合、何を目的としているのでしょうか。

比較のため一覧を作成してみました。

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先発投手に関しては井納が退団しましたが、ピープルズを残留させつつロメロ獲得の動きがありました。ピープルズもロメロもまだ20代で若く、井納と比べても年齢差があります。

リリーフもパットンは退団しましたが、シャッケルフォードと風張を獲得してきており、シャッケルフォードとは1歳違いですが若干の若返り感があります。

野手陣を見ると、石川・梶谷・ロペスが退団したのに対してオースティンとソトを残留させて、人的補償では27歳の田中俊太を獲得しています。

これを見て分かるところは、やはり若返りです。30代中盤の選手たちから20代後半~30代前半の選手へと移行しており、球団側もそういった選手たちは残留させています。オースティンは昨年時点からオプション契約を結ぶなど、世代交代の準備を近年進めていました。意図をもって進めていたことは明らかです。

 

世代交代の目的

ベテランの人から若い人に役割を任せる、いわゆる世代交代というのはどこにでもあり、これらは良い意味で捉えられることもありますが、果たしてDeNAの世代交代は良いと言えるのか、疑問に持つ人もいると思います。

プロ野球の世界はある意味「実力主義」の最たるものと言えますし、結果さえ残せればプロとして長く居続け、年俸もどんどん上がっていく仕組みです。そういった世界なので選手同士が競い合って結果を残した方がチャンスを得るというのが、ある意味自然な成り行きだと思います。そうした競争なしに一定以上の年齢がくると、球団側が若い選手へチームを移行させていく方針をとっていくのは、実力主義にも反するのではないかとも思えます。

ただ、逆の側面で言えば若い選手が育ちやすい環境をつくっているとも言えます。選手が成長するには実戦経験は不可欠で、いつでもチャンスを掴みやすい状態にするのも大事になってくるでしょう。ベテラン重視の場合、その選手が衰えてきたとしても実績面での差や、そもそもそのポジションでずっと起用してきた若手がいなかったことなどから、後継者がいないという事態に発展することが多いです。その結果ベテランが衰えても器用せざるを得ない状況になったり、若手を起用してもなかなか結果を残せず該当ポジションが大きな穴になってしまうことがあります。

 

DeNAの場合、今まではある程度ベテランから若手への移行がスムーズにできていました。例えばDeNA初期の頃は外野はラミレス・多村・金城らベテラン勢が定着していましたが、徐々に筒香・荒波・梶谷らに移行してきましたし、その後荒波が衰えてくると桑原が台頭してきて、と外野に大きな穴が出ないようにしています。現在なら筒香の後釜に佐野、梶谷の後釜に神里といった形ですね。内野だとショートは石川→倉本→大和といった形でレギュラーが移り変わっています。倉本の成績が落ちてきた時にはちゃんとFAで大和を獲得していますし、今は柴田が次世代ショート候補、2軍では森を育成している状態になっています。世代交代を推し進める球団ですが、ただ闇雲にベテランを放出しているのではなく、準備を前もってしっかりと行ってきていますし、戦力の大きな穴をつくらないようにしてきています。

今オフの動きも、そうしたこれまでのDeNAの方針通りの中での動きと言えるでしょう。そして来季FA権を取得する宮崎に対しても、この方針で交渉にあたると思われます。宮崎の後釜として伊藤裕・牧といった選手を揃えてきましたし、人的補償で田中俊を獲得したのも、後継者候補の1人として期待している部分はあるでしょう。宮崎を残留させないようにするとは思いませんが、仮に移籍したとしてもそのための後継者は準備しておくというスタンスだと思います。

 

これで優勝できるか?

ここまで球団が世代交代を推し進める目的やメリットについて書いてきましたが、最も肝心なことはこの方針で優勝できるのかどうかです。

世代交代を意識した球団運営は、戦力の大きな穴をつくらないようにするという点ではプラスに働きます。なので急激に弱くなりにくい球団運営はできるでしょう。分かりやすく言うと「Aクラス争いができる球団」は継続していけると思います。

ただ世代交代の過程でピークを過ぎたとはいえ、まだ1軍戦力として見込めそうなベテラン選手が退団していくのはその時点での戦力ダウンになります。なので優勝できるほどの突出した戦力というのも作りにくいです。

そこで、球団は優勝への思いがどれほどあるのかについて考えてみると、高田GM時代からのDeNAの方針としては「常にAクラスに居つつ、チャンスがあれば優勝を狙う」というのが基本になっていて、これは高田GM・池田球団社長の時代から続いています。

今の世代交代を意識したやり方はまさにその形を体現していると言えますし、今季は4位だったものの、実力的に今は2~4位の中で定着できる球団にはなってきているでしょう。常にAクラスにいるというのはほぼ達成できています。

 

優勝のチャンスは?

もう1つの「チャンスがあれば優勝を狙う」という部分ですが、このチャンスはではいつ来るのか?という疑問を持つ人もいるでしょう。

これは自分の予想になりますが、今オフの動きから見て球団はチャンスを「3年後」と考えているように見えます。3年後のチームの戦力を予想してみますと、こうなります。

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24歳~33歳になる予定で、現時点で1軍でも結果を残しつつある選手たちを挙げてみました。こう見ると現時点での選手層とそこまで違いが無く、ここから戦力流出が無ければ成長分を加味して、現在よりも戦力がプラスになっていく見込みは十分あるでしょう。

不安な点というと、リリーフが全体的に30代中心になっていくのと、内野が大和・宮崎らがいない状態でどこまで戦力アップできるかですね。現時点でこういう構想を持っていて、今後不安のあるポジションが出てきたらその都度補強する、というような形を取っていければ3年後にはかなり充実した戦力になっていると思います。

 

まとめ

以上が球団編成の意図についての考察です。

今オフの動きを見ると不安な部分はありますが、球団の方針はずっと継続してきて、今オフもその方針に則った動きだと考えます。賛否はありつつも継続という点はできていますし、あとはこれがしっかりと結果に結びつくよう願いたいですね。

 

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