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【横浜DeNA】梶谷・井納のFA移籍・球団の動きと影響について【考察】

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2020/12/11時点で、FA権を取得した梶谷・井納の巨人移籍が決定的、という報道が出ました。(その後両球団が梶谷の移籍について公式発表)

今季投打で主力だったこの2人が同時に巨人へFA移籍するということで、DeNAファンからは不満や戸惑いの声が出ています。

果たしてDeNAは2人の流出を阻止することが本当にできなかったのでしょうか。また、流出はやむを得ない判断だったのでしょうか?

今回考察してみたいと思います。

FA権取得への経緯と球団の思惑

今季大活躍だった2人

梶谷と井納は今季国内FA権を取得しました。梶谷は今季1軍で109試合に出場、打率.323 本塁打19 盗塁14 OPS.913という成績を残し、チームの1番打者として大きな結果を残しました。これはチーム内で見ても4番の佐野に次ぐ大きな結果で、リーグでもトップクラスの成績です。

梶谷個人のキャリアを見ても、どれをとっても今年は最高レベルでキャリアハイと言える成績でした。梶谷は現在32歳で、直近2年間は殆ど1軍で結果を残せていなかったですし、おそらく自身もここまでの結果を残すとは思っていなかったことでしょう。それほどまでに異例の結果でした。

井納は今季17試合に登板し、89回 6勝7敗 防御率3.94 WHIP1.39 QS率47.1%という成績でした。規定投球回には届いていないものの、チーム内では大貫に次ぐ2番目の投球回数で、今永や平良が離脱していた時には井納がローテに定着して先発の大崩れを食い止めていました。過去2年はなかなか結果を残せておらず、34歳になって中6日のローテーションを守ることも難しくなってきた井納でしたが、その中で久しぶりに結果を残すことができたシーズンと言えるでしょう。

2人に共通しているのは、直近の成績は実はあまり良くなく衰えが見えてきたと思われていたものの、今季はそれに反して大きな活躍ができたという点です。

 

球団としても想定外の活躍だった?

2人とも直近2年間は成績が下降していた選手たちで、その2人が揃って今季活躍し、揃ってFA権を取得することになりました。この点を果たして球団側はどう見ていたのでしょうか。考えられるのは、今季の活躍は「出来過ぎ」だったという見方です。

球団の構想としては、本来なら今年のセンターは昨年レギュラーだった神里が定着していて、ライトには新外国人のオースティンが定着、筒香の後釜のレフトには佐野が定着という形で考えていたのかもしれません。そこへ、ここ2年間調子の悪かった梶谷が予想以上の大活躍をした。これはチームにとっては嬉しい誤算であることはもちろんですが、同時に来季以降もセンターとして定着させる目途が立つのか、判断が難しかったと思います。

井納に関しても、本来なら今季の先発は今永・濵口・上茶谷など昨年の投球回数上位陣がローテに定着していて、若手の平良や大貫の台頭も見込める形になっていて、井納はローテに定着というよりも、中10日ぐらいの間隔で谷間を埋めることができれば良いというぐらいの評価だったかもしれません。ただ、今永・平良が揃って故障で離脱することになり、濵口・上茶谷も調子が悪くなかなか結果を残せず、先発の頭数が一気に不足する事態に陥りました。

そこへ井納が中6日のローテに定着して、何とか先発崩壊の危機を救いました。本来だったら中10日で1軍と2軍を行き来させるような起用になるはずだったのが、中6日でずっと1軍に帯同することになったことで、FA取得日数の消化が予想以上に早まって、シーズン終盤にFA権を取得することとなったのではないでしょうか。

梶谷も井納も、本来なら今年FA権を取得するか怪しい立場で、仮に取得できたとしてもそこまで結果を残せていないはずで残留する見込みだった。しかし2人はその予想を良い意味で大きく裏切った。そのため球団としては予想外のFA権取得で、絶対に引き留めるという気持ちに揺らぎが出てしまったのかもしれません。 

 

移籍しやすくしたこと、移籍によって広がった代償

宣言残留容認・マネーゲームしない方針

FA権を取得した梶谷・井納に対して、三原球団代表はシーズン終了直後に2人の宣言残留を容認することと、他球団が獲得に乗り出してもマネーゲームしないことを発表しました。

この点についてはファンの間で特に議論になっているところですが、三原球団代表を含めたDeNA編成陣の考えとしては上で記載した通り、今季の活躍を「出来過ぎ」と考えていた可能性は否定できず、それ故に何が何でも残留をさせるというような意識が見えなかったのではないでしょうか。

ちなみに「マネーゲームしない」の意味は「お金を出さない」ではなく、年俸の釣り上げをしないということです。DeNAとしては最初の提示条件を最大級の評価としているので、選手側もその条件で判断ができるということでしょう。この点は交渉を不用意に長引かせないことや、相互で適正条件について認識違いが無いことなどのメリットもあります。

ただ、これが選手側としてはFA宣言しやすくなり、他球団へ移籍しやすくなったことは事実で、本気で残留させるならもっと粘り強く交渉するなどのやりようはあったと思います。今回、巨人との交渉が終わってからあまり日が経たずに梶谷も井納も移籍を決めたので、本当にDeNAとはマネーゲームや条件見直しなどは無かったのでしょう。梶谷も井納も、こういった球団のある種ドライな姿勢が来季以降の出場機会に保証が持てないと思って、移籍を決断した可能性もあったかもしれません。

 

同一リーグの優勝球団へ選手を移籍させてしまったこと

球団側が来季の梶谷・井納に対しての期待値がそこまで高くなかったというのは、年齢や直近の成績を見れば、納得できる部分もあると思います。ただ、同一リーグのしかも今季リーグ優勝した球団へ移籍させてしまうのは、DeNAと巨人の間で戦力差が広がってしまい、それが来季のDeNAの優勝を遠ざけてしまうことに繋がるのは事実だと思います。

DeNAはずっとリーグ優勝できていませんが、昨年南場オーナーがラミレス監督に「来季は優勝ですよ」と激を飛ばしたこともありますし、優勝を狙うことは球団が存続する上で絶対条件だと思います。それに対して結果的にマイナスとなることに繋がってしまったのは、批判されても仕方のないところです。

FA権取得や宣言残留容認、また今季の契約更改の状況などを見ていると、選手に対しての配慮はとても素晴らしいものだと思います。昨年、伊藤光がFA権を取得した際には三原代表が「お前に(ベイスターズが)救われたんだよ」と声掛けまでして4年契約を結んで残留させましたし、選手を大事にする姿勢は間違いなく改善しているでしょう。

ただ、そうした環境改善や選手を大事にする姿勢を見せても、梶谷・井納は移籍してしまったという、ある意味悲しい結末が起きてしまいました。

優勝を狙う球団である以上、優勝のためにチームを運営することがまず第一ですし、そのための選手の環境や待遇改善を行うべきものであるはずです。逆に言えば、いくら環境や待遇を改善したところで、それが優勝へ結びつかなければ意味がありません。

個人的に今までのDeNAの球団方針は概ね賛成している部分が多いです。ただそれはチームを強くして優勝させるという最終目的に向かっているのが見えるからです。

  • 観客動員数やファンの数を増やすことは、チームの収益を増やします
  • 2軍施設を含めた施設・設備投資は選手が好成績を残しやすくなります
  • フロント主導の育成・人事は長期的観点でチームの強さの向上に繋がります
  • むやみに外部補強に頼らないのは、マネーバランスを安定させ選手の不信感を無くします

このように、今までDeNAがやってきたことは、チームを強くするために必要で意味のあることだったと思っているので賛同してきました。

ただ、同一リーグのチームへの戦力流出は、強くすることと相反する行為ですし、それが分かっていながら必死に残留させる姿勢が見られなかったことは、チームの運営に対して1ファンとして、大きく評価を落とすことに繋がってしまいました。

また、ファンも優勝を目指している人が多いですが、それだけでなく選手1人1人への想いが強いファンもいます。興行である以上、そうしたファンの想いにお金をかけることも大事ですし、ファンあってのチームであることを球団は今一度考えて欲しいです。

 

来季に向けて、球団がすべきこと

2人の放出に見合う戦力補強を

球団としての2人への評価や、移籍したことで発生するであろう戦力差について、ここまで書いてきましたが、これでオフシーズンが終わって来季開幕を迎えるようなことは、あってはならないでしょう。

来季への公算がどうであれ今季結果を残した2人を放出したことで、それに見合った形で新しい戦力が補強されないとただの戦力ダウンだけになります。今までの球団運営を見てきて、そうはならないと確信してますし信頼もしていますが、ここは念押しして補強をして欲しいと願っています。

現在、支配下登録枠は梶谷・井納が流出したことで64名になっています。

どのような補強ができるかは今朝の記事でまとめていますが、まずはこの形で人的補償や外国人補強をしっかりと行って欲しいですし、チームを強化することを第一に考えて動いて欲しいです。

ここでの戦力補強が適切にされることで、梶谷・井納を放出したことに対してのカバーをしっかりと考えて動いていたのだと見直すこともできますし、獲得した選手が来季活躍してチーム成績を上げることに繋がれば、信頼に足るフロントだと改めて安心することができます。

是非、そう思わせてくれるよう今後の動きを期待しています。

 

 

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