データで語るドラフト・育成論

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【ドラフト2020】横浜DeNAのドラフト考察(戦力分析編)

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コロナの影響で学生野球や社会人野球がなかなか試合を組めず、ドラフトについても情報が滞ることが多かったが、8月が過ぎ徐々に今年のドラフト候補の状況が見えるようになってきた。プロ野球の方でも前半戦が終わり、各球団の戦力が徐々に見えてきている。

そういう中で今回は、横浜DeNAのドラフトについて現時点での考察をしてみたいと思う。段階を分けて、今回は具体的な指名選手を挙げるのではなく、DeNAの現状の戦力分析に特化した内容だ。

現状の戦力

8/30時点、横浜DeNA61試合 31勝 27敗 3分セ・リーグ2位の位置にいて、1位巨人とは4.5ゲーム差を離されている。今季はセ・リーグはCSが無いため1位を狙わなければならない立場だが、現状やや巨人と離されており今後の直接対決でどれだけ近づけるかがカギになってくるだろう。

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内容を見ると、失点数はリーグ2位で防御率も2位なので、ハマスタながら投手陣の奮闘が光っている。得点数はリーグ5位だが打率はリーグ1位になっていて、打線も打ててないという状態では無さそうだ。1位巨人と比べると得点数・失点数どちらもまだ及ばない状態で、現状で悪くないにしても優勝を狙うならもう1段階上になって欲しいというところだろう。

投手陣の状況

先発

20代中心で頭数が揃いつつある良い状態。高卒組の伸び悩みが目立つ

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今永・平良が怪我で離脱したものの、前半戦の先発の安定はこの2人の途中までの活躍が大きかった。そしてローテに定着している濵口・井納・大貫らがいて、ピープルズ上茶谷が1・2軍を上げ下げしながら起用されている。あとは怪我で離脱していた坂本が1軍復帰してくれば、先発ローテはひとまず頭数は揃った状態になる。

先発陣は20代が多く今の先発陣で数年はローテを任せられる期待はある。ただ、懸念があるとすれば、高卒投手がなかなか台頭してきていない点が挙げられる。今季は中川虎・櫻井・阪口ら高卒3年目投手を1軍昇格させて起用しているが、3人共なかなか安定した結果を残すことができていない。高卒4年目の京山は今季まだ1軍昇格が無く、この世代からそろそろ1人ぐらい1軍で投げれる投手が出てきて欲しいところだ。

ファームでは上記高卒投手に加え、浅田・宮城など高卒1・2年目投手がローテに入っているが、彼らはまだ2軍育成が必要な投手たちで1軍昇格を考える段階では無いだろう。

こう見るとやはり若い世代の台頭が弱い。特に高卒で指名した投手がなかなか戦力化せず、現状だと1軍ローテの控えにもなっていない状態だ。今永・平良が怪我をしたのは不運ではあるが、そういう時に代わりにローテに入れる投手が少ない。穴を埋めるまではいかなくても、どうにかローテをまわせるぐらいの結果が欲しいが、それもできていないので先発投手のやりくりが厳しくなっている。

そのためドラフトでもまだ大卒や社会人の投手は必要と言わざるを得ない。以前に比べると最重要とまではいかないまでも、上位指名でないと安心はできないだろう。

リリーフ

三嶋・石田の活躍で勝ち継投の安定化に成功も、新戦力の台頭が弱い

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今季は山﨑康が開幕からなかなか調子が上がらない状態が続いていて、ついにシーズン中に抑えを外れることになった。その代わりに抑えに入ったのが三嶋だったが、非常に安定した内容で既に山﨑のセーブ数を抜いている。セットアッパーに入った石田も非常に安定していて、勝ちパターンの8・9回が確立したのは大きい。他にはエスコバーが安定、国吉パットンは序盤不安定な投球もあったが、安定してきて様々な場面で起用されている。武藤平田も1軍に定着してリリーフ事情が苦しい中でよく投げている。ルーキーの伊勢もシーズン中盤からまた昇格してきて、安定した結果を残せている。

今季は先発が8・9回まで投げることが少なく、日程の都合からリリーフ陣の登板頻度が多くなっているが、その中でもよく持ってると言える方だろう。ただ、リリーフから1人2人故障者が出てしまうと一気に苦しくなるため、安定した投球ができる投手をどんどん輩出していきたい。今のところ伊勢が期待できそうだが、伊勢だけでなく続く投手が出てきて欲しいところだ。

1軍リリーフは殆ど20代後半~30代の投手ばかりで、正直若い投手が少ない。5年もすれば大半は入れ替わりが求められる年齢になっていて、その際に若い投手がいないと苦しくなってくるだろう。伊勢に続いてリリーフに定着できる投手の指名は今年も狙っていきたいところだ。

 

野手陣の状況

捕手

伊藤光の降格があったが併用で凌ぐ。人数のバランスも良く優先度は低い

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今季は当初は伊藤光がスタメンマスクを被っていたが、戸柱高城のスタメン機会が増え、またラミレス監督とのリード面での意識の違いなどから2軍に下がった。その後は戸柱がメインでスタメンマスクを被りつつ、濵口先発の時やリリーフデーの時に高城がスタメンに入るなどしていて、8月からは打撃の状態が良くなってきた嶺井もスタメンで起用される機会が増えてきている。このように併用制を取っており、それぞれ一長一短はあるものの現状での捕手陣の状態は悪くない。

2軍では山本・益子・東妻らが起用されていて、山本が8月に入って打撃成績が急上昇してきており、今季もどこかのタイミングで1軍昇格がありそうだ。東妻も高卒ルーキーながらスタメンで出場する機会が多く、まだ攻守共に粗があるものの良い勉強ができている。年齢構成は1軍が30歳前後で、2軍が20代前半の若手たちという分類になっていて、人数も7人で丁度良くバランスはとても良い状態だ。

この状態で捕手を補強するとしたら、攻守でずば抜けていていきなり1軍で活躍できるような即戦力級の捕手か、内外野へのコンバート前提の捕手になるだろう。ただチーム内の他の補強ポイントもあるため、そのあたりも考慮した上での指名するか判断することになりそうだ。

 

内野手

現時点では安定してるが、高年齢化してくる三塁・遊撃のバックアップは必要

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 一塁はこれまでずっとロペスが守ってきたポジションだったが、今季は不振が続き8月にはとうとう2軍落ちとなった。これまで怪我以外での2軍落ちは無く、身体的な衰えが隠せなくなってきている。そのため今はソト中井が一塁のスタメンに入る機会が増えているが、この2人は他のポジションとも併用の形で、一塁手として定着している選手はいない状態だ。新外国人のオースティンは好成績を残していて、一塁も守ったことはありロペスの後釜としては文句のない成績だが、現在は怪我で2軍にいる。一塁は外国人の補強がしやすいポジションなので、ドラフト面では意識する必要は無さそうだが、今後固定できなくなってくるとサブで一塁を守れるような選手を確保する必要は出てきそうだ。

 二塁は柴田ソトが主にスタメンで守っていて、柴田が打撃面でも結果を残せるようになり、安定化してきている。ソトが将来的に一塁を守る形になるとするなら、柴田が二塁のレギュラーとなる可能性も見えてきた。対左投手として中井を起用したり、大和をセカンド起用するなどいざという時のバックアップ体制も整ってきている。2軍では伊藤裕をメインで起用していて、将来の二・三塁手候補として育ってきている。

 遊撃は大和倉本が打撃向上していて、こちらも悪くない状態だ。大和が年齢を考えるとレギュラーで出続けさせるのが心配で、そこに調子が良い倉本が台頭してきて柔軟な起用ができるようになっている。ただ倉本も来年は30歳を迎え、数年先を見据えると若い選手の台頭も欲しいところだ。柴田がセカンドに定着するとなれば尚更で、柴田と二遊間を守れるような選手が出てきて欲しい。2軍では昨年の高卒ドラ1ルーキーのを積極的に起用し育成中だ。まだ攻守で粗さはあるが、地肩の強さや足の速さなどは明らかに別格で、技術面が身につき対応できるようになっていた際は間違いなく1軍レギュラーをも狙える選手になるだろう。

 三塁は今季も宮崎が定着していて、攻守両面で頼りになる存在になっている。チーム内でも宮崎以上の打撃技術を持ってる選手はおらず、誰もが認めるレギュラーだ。ただそのため、宮崎の代わりになる選手もいない状態になっていて、宮崎が今後衰えたり怪我で離脱した際に、代役が務められる選手が出てきて欲しいところだろう。今のところは中井倉本などが入っているが、将来的には後継者となる選手が出てきて欲しい。2軍では田部知野が主に起用されていて、2人共攻守ともにまだ1軍レベルには至っていないが、宮崎の後継者候補となるような成長を期待したい。

この他に内野のユーティリティとして山下百瀬雄馬がいて、山下は今季シーズン途中から上がってきて代打で結果を残し、スタメンでも起用される機会が出てきた。百瀬も昨年1軍に上がってきており、今季も1軍で必要になる場面は出てくるだろう。(9/1に1軍昇格した)

また、ベテランの石川もいつでも1軍に上がってこれるよう、2軍で準備をしている。今季は一塁や外野も守っており、ベテランながらチームのためにどういう役割でもこなそうという姿勢を見せている。

こういった内野陣の状態を考えると、1番の補強ポイントは宮崎の後釜になり得る三塁手になってきそうだ。宮崎に抜けられた際の対処手段が今のところ無く、二遊間の選手を起用することで何とかやりくりしていくしか無い。こういった状況を変えるために、打撃が良くて三塁を守れる選手の補強は必要になりそうだ。

次点としてはショートのバックアップ要員も欲しいところで、大和倉本が30代になって柴田がセカンドに定着した際、ショートが空いてしまう。という期待できる選手もいるが流石にまだ1軍起用は早く、またも将来的にショートを守るかどうかは現時点では分からない。次世代のショート候補を増やす意味でも補強は必要だ。

 

外野手

佐野の台頭で左翼が安泰化も、中堅・右翼が流動的で新たな補強も一つの手だ

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今季は何と言っても佐野の台頭がチームで最も明るい話題といえるだろう。筒香MLBへ移籍したことで左翼に穴が空くと思われたが、見事にその穴を埋めるどころか期待以上の結果を残す活躍ができている。佐野は年齢的にもまだ25歳と若く、ここから長くレギュラーとして定着していける期待もある。

佐野に続いて今季開幕から結果を残してきたのが梶谷で、ここまで主に1番・センターでレギュラーを掴んでいる。打率.280以上を維持しつつ本塁打数が佐野と並ぶ2桁に載せ、盗塁も決めるなど積極的な1番打者として結果を残してきた。8月に入ってやや調子を落とした時期もあり、神里がセンターに入ることも増えてきたが基本的に1番打者を任されて首脳陣の信頼は厚い。梶谷は今季FA権を取得してオフにどういった決断をするか注目が集まるが、どちらとしてもセンターは他の選手がもう少し安定して結果を残せるようになってほしいところだ。本来なら桑原神里で競って無ければならないはずで、そこが2人とも開幕から調子が悪く梶谷の独走状態になっていた。特に桑原は昨年も結果を残せてないので、このままではいくら守備が良いとはいえ首脳陣も我慢ができなくなってくるだろう。乙坂もセンターを守る機会があったが、攻守ともに物足りなさはありレギュラーとして見るにはまだ難しい状態だ。

右翼は当初、新外国人のオースティンが好成績を残して定着するかと思われたが、試合中の怪我で8月頭に2軍落ちして以来、昇格してきていない。打撃に関してはレギュラーとして文句のない結果を残せていただけに、離脱が痛くなっている。オースティンに代わって守っているのがソト梶谷で、梶谷が入る時はセンターには神里らが入り、ソトが入る時にはセカンドに柴田らが入るような形になっている。できればソト梶谷も自分の持ち場を守りつつ、右翼にしっかりとレギュラーで入れる選手が出てきて欲しいが、なかなかそういう選手が出てきていない。

他に1軍で起用されている選手では楠本・細川・蝦名などがいて、彼らの台頭に期待したいところだ。2軍では彼らに加えて、関根・宮本らが積極的に起用されていて、この2人も年齢的にそろそろ1軍での活躍が欲しいところだ。

外野はこういった状態になっており、現状で佐野がレギュラーに定着してレフトが安泰など明るい材料もあるが、センターは梶谷のFAの動向によるし、ライトも流動的な状態になっていて、人数はそれなりにいるもののレギュラー1歩手前の選手が多く、盤石とは言い難い。補強せずに彼らをそのまま競争させるのも良いが、レギュラーを掴めるような有望な選手が補強できそうなら、そういう選手を獲得するのも手だろう。

またセンターの守備が良い選手が少なく、そのせいで外野の上げ下げが滞っている場面が見られる。細川以降、高卒の外野手を獲得しておらず2軍が1軍候補選手の調整場になってきているため、数年の育成を見込んで有望な素材型の外野手を獲得するのも手だろう。

 

まとめ

Aクラスにいれる戦力は整ってきつつも、優勝まであと一歩の戦力という状態になっている。今季優勝する可能性はまだあるが、例え優勝できたとしてもかなり苦しい戦いと、いくつもの幸運の中での優勝ということになるだろう。そのためオフの補強は不可欠で、ドラフトも非常に重要になってくる。

ここまでの考察で、現状の課題は以下の3つになると思われる。

①投手は主力が安定しつつも、若い世代の台頭が弱く選手層の薄さに繋がっている

②内野はレギュラー組の高齢化が心配になり、彼らの後継者の準備が必要

③外野は数自体はいるものの、レギュラーまであと1歩の選手が多く決め手に欠ける

今年のドラフトはこの課題を埋めていけるような指名が望ましい。というのが本記事での結論だ。

 

続編(指名傾向・優先度)↓

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