データで語るドラフト・育成論

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【プロ野球2019】ヤクルトの戦力分析とドラフト指名予想

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9月に入りドラフトが間近に迫ってきました。

そこで各球団の戦力分析とドラフト指名予想をしていこうと思います。

今回は東京ヤクルトスワローズです。

現状の戦力分析

[先発投手]

先発防御率は5点台にも到達。安定してるといえる先発が1人もいない状態

 ヤクルトの先発は、はっきり言って崩壊している。打者有利の神宮という事情もあるが、それでも先発防御率は5点台に到達しているのはもう球場のせいだけではないだろう。先発指標のSP RARだとリーグ5位で下に中日がいるが後半戦で安定してきた中日に比べると、印象面で圧倒的にヤクルトの方が悪いように見える。先発陣の中で唯一ローテを守れて規定投球回到達の小川防御率5.00前後で、セリーグ規定投球回到達投手の中では当然ながらダントツの最下位だ。2番手が39歳の石川で主な先発陣の中では1番防御率が良く3点台後半の成績になっていて、先発陣の中では唯一の光明と言えるだろう。高橋奎・ブキャナン・高梨・原などは軒並み防御率4点台後半以上で、5点台・6点台も普通にいる状態になっている。正直、彼らはなぜローテを守れているのか不思議なくらいだ。他には山田が先発登板は10試合ほどだが、防御率3.50前後と良い方で、ローテ上位陣の現状を考えると来年に期待したい。主力先発がこの状態だと早々にノックアウトされて、序盤に決まってしまう試合も多い。打線によって逆転する試合もあるが、基本的に先発投手が試合を作らないことには7~8割方負けるので、先発投手の立て直しは何を置いても先にやらなければならない。こうなると2軍で育成中に若手に期待を持ちたいところだが、ヤクルトの2軍運用は正直若手育成にあまり力を入れていないように見える。投球回数が最も多いのが引退表明した館山で、次が34歳の山中になっていてベテラン2人の調整が最も重視された起用になっていた。3番手から大卒ルーキーの清水、25歳の田川、22歳の育成投手のジュリアスと若手を起用しているとも言えるが、1番育成が必要な20代前半にもっと登板数を割いた方が良いだろう。ほぼ毎年のように高卒投手を指名しているので、彼らの育成に時間を割かないことには育つものも育たなくなる。成績的にも清水ジュリアス防御率が悪く、まだ安定した投球にはなっていない。彼ら以外で2軍でしっかり投球回数を与えられている若手が見あたらないため、今後の若手の台頭も難しい状態だ。現状の先発陣の成績や、石川・山中ら先発高齢化、館山・寺原らの引退、などを考えるとこの先もますます先発に苦しむことは必至で、ドラフトでは投手を最優先で指名することは間違いなく、即戦力投手の補強が必須と言える。高卒投手の指名も継続していくべきだが、そのためには2軍の環境整備も一緒に行わないと意味が無いだろう。

ドラフト重要度:上(1位~上位指名)

ドラフト指名対象:1軍先発を立て直せる即戦力を必ず確保。高卒は下位で育成整備も

 

[救援投手]

盤石ではないものの頭数が揃った状態。だがベテランと外国人頼りは否めない

ヤクルトのリリーフ陣は先発に比べると、そこまで大崩れしている投手は少ない。梅野・五十嵐・近藤・ハフ・マクガフら登板数上位リリーフ陣は大体3点台に収まっていて、救援失敗もあるが彼らが勝ち星を稼ぐこともあり、先発陣の状態を考えるとよくケアできてると言えるだろう。今年は守護神石山がコンディション不良で5月に離脱し、その後も復帰したが今度はインフルエンザで離脱したりと、なかなか1軍にいることができなかった。その間代役に梅野が抑えを任されたり、ハフマクガフが任されることもあったが、昨年の抑えとしての実績を考えるとやはり石山に定着してもらいたいところだろう。リリーフの中で近藤は36歳、五十嵐はもう40歳で、この年齢でリリーフでフル回転できてるのは凄いことだが流石にそろそろ衰えが出てくる頃で、そろそろ登板数を減らして代わりのリリーフが出てきて欲しいところだ。このように頭数は揃ってはいるものの、やや安定感に欠き将来的にも不安な点のあるリリーフ陣になっている。2軍では久保・屋宜・蔵本・中澤・中尾などが登板数多く、リリーフとして準備しているが、この中から今期は1軍で結果を残せたといえる投手がいないのは寂しいところだ。数的な部分では問題無いぐらいの頭数なので、あとは質的な部分をどれだけ向上させていくかだろう。

ドラフト重要度:中(中位~下位指名)

ドラフト指名対象:頭数は揃ってるので数よりも質を意識した即戦力のリリーフ

 

[捕手]

正捕手の中村悠が盤石の体制。3年契約で流出の心配も無いがそろそろ後継者育成か

ヤクルトの捕手は2012年頃から中村悠平が1番手として定着していて、現在29歳ながらもう大分年季の入った捕手になっている。ここまで長く正捕手として続けられたのも攻守両面の安定感があってのことで、今やヤクルトにとって欠かすことのできない存在になっていると言えるだろう。今季の中村は打率.270前後 5本塁打 OPS.750前後と捕手としては打撃面ではなかなか良い成績を残せていて、守備面でもUZRはプラスで捕手としての指標も悪くない。WARが3.0を超えておりレギュラークラスとしての貢献度をしっかりと果たせていると言えるだろう。中村は昨年FA権を取得したが、3年契約を結んでおり再来年までは球団に確実に在籍している。3年後に32歳ということを考えれば、最後までヤクルトで続ける可能性が高いだろう。そのため当分1軍捕手にも困らないはずだ。ただそろそろ後継者準備に入っても良い段階で、今季は松本・古賀らを1軍で起用することがあった。2人とも現状打撃も捕手としての守備もまだ中村に及ぶものではないかもしれないがチーム内でも20代前半の若手たちなので、中村がいざというときには松本古賀にも1軍捕手として結果を残せるよう、今の内に育成しておく必要があるだろう。捕手指名の可能性は低いが、ベテランの井野がもう35歳で数年以内に引退する可能性はある。そうなった際に捕手指名を考える必要があるだろう。

ドラフト重要度:(下位指名・指名無し)

ドラフト指名対象:正捕手の中村がいて、若手の人数的にも指名の必要は低い

 

[内野手]

球界No.1セカンドの山田は問題無いが、ショートがまだ固定できず競っている状態

ヤクルトのセカンドに関しては特に言及する必要も無いぐらい盤石といえるだろう。山田は球界No.1のセカンドで今季は打率.270超え 34本塁打 33盗塁 OPS.961と圧倒的な打撃成績を残している。打率3割が難しくトリプルスリー達成は逃しそうだが、それができなかったとしても何ら戦力的に気にする必要のないところだ。ただ山田は来年FA権を所得するため、来年のオフはヤクルトにとってチームの生死を左右すると言えるぐらいの大変なオフになるだろう。仮に抜けた場合に備えて今のうちからセカンドを育成しておく必要はあるが、正直山田が抜けた穴を埋められる選手はチーム内にはいない。DeNAのソトのような外国人セカンドを獲得するぐらいしか、すぐに穴埋めする手は無いだろう。2軍では宮本・三輪・松本友らがセカンドで起用されていて、三輪は今シーズンで引退が決まったが、宮本OPS.700超えと結果を残しつつある。山田ほどはなれないにしても、次期セカンド候補としてこれから順調に成長していって欲しいところだ。

ショートはやや難題で、今季は全く固定できなかったポジションだった。これは昨年ショートのレギュラーだった西浦がシーズン中の怪我で離脱し、奥村・廣岡を加えた3人が併用する形になった。奥村は守備面での貢献が大きくチーム内ショートで唯一UZRがプラスになっているが、打撃面では打率1割台で長打も無く厳しい状態だ。逆に廣岡は打撃では本塁打10本でOPS.700超えとなかなかの結果を残しているが、守備面が範囲狭く失策も多い。どっちにも難点があって西浦の代役を務めるには難しいと言ったところだろう。2軍では吉田大成を積極的にショートのスタメンで起用している。失策数が多くなかなか結果を残せてない状態で、大卒社会人としてはやや厳しいスタートといった感じだろう。西浦が調子を戻して復帰してくれば解決しそうだが、このように控えのショートがやや物足りない状態になっていて、今後も積極的に良い選手を獲得していきたいところだ。将来的に山田の後釜のセカンド候補としても考えて指名するのもアリだろう。

ドラフト重要度:中(上位~中位指名)

ドラフト指名対象:山田の後継者やショートのレギュラー争いに入れる身体能力高いショート

 

高卒2年目の村上が歴代本塁打記録に並ぶ金字塔。三塁は太田が1番手になりつつあり

今年ヤクルトのみならず球界を賑わせた活躍をしたのが村上だ。まだ高卒2年目の10代ながら、10代の最多本塁打記録を塗り替え、更に高卒2年目以内の最多本塁打数の36本に並ぶ本塁打数となった。現時点ではまだヤクルトの試合があるため、最多本塁打記録の更新の可能性もあるだろう。歴史的にも素晴らしい偉業をやってのけた村上はもはやレギュラーで起用していくことに何の疑いの余地も無い。守備位置はファーストがメインだがUZRはプラスで安定していて守備も良く、攻守両面で結果を残せている。まだ若いためこれから先不調になったりすることもあるだろうが、それでも怪我しない限りはレギュラーで起用し続けていくことになるだろう。外国人補強もこの村上がいるのでファースト専は獲得を考えなくて良く、他のポジションの強化に割り当てるべきだ。

ファーストに比べるとサードは起用に苦しんだ。川端がもう1軍で結果を残すのが難しくなっていて、今季は太田が1番手で起用されることが多く、他には大引村上が守ることもあった。大引が今オフの退団が決まり、村上もファーストで1人立ちしたことを考えるとこれからは太田が1番手として起用されていくことになるだろう。だが太田の今季の成績を見ると、打撃面では打率.250前後 3本塁打 OPS.650前後とサードとしてはやや物足りない感がある。守備面でもサードのUZRは12球団で1番低くマイナス値で、守備範囲も守備率もやや悪い内容だ。まだ22歳で伸びしろが期待できる選手だが、この太田を1番手で定着させるにはちょっと厳しいと言える。せめて競争できる選手がいて欲しいところだ。三塁なので奥村・廣岡・宮本なども起用できる可能性はあり、彼らを含めてショート・サードはまだ競わせていくのが良いだろう。

ドラフト重要度:中(中位指名)

ドラフト指名対象:攻守両面で現在の1軍選手以上の実力を見込めるサード

 

[外野手]

青木・バレンティン・雄平のベテラン外野陣。後継者候補もようやく出てきたか

今季も昨年同様ベテラン3人の外野手がレギュラーに定着することとなった。内容的には青木が打率.300前後 16本 OPS.800超え、バレンティンが打率.280台 33本 OPS.925、雄平が打率.270台 12本 OPS.700前半となっている。青木・バレンティンに関しては文句無しの結果を残せているが、雄平が昨年までに比べるとやや打率を落としてきた。守備面を見てみると、3人ともUZRはマイナスで特にバレンティン雄平セリーグでもかなり低い方だ。WAR青木が3.5以上、バレンティンが2.0前後で守備のマイナス分を上回る打撃の貢献ができているが、雄平は0.0前後になってしまっており、もうレギュラーとして定着していくのは厳しい段階に来ている。青木バレンティンに関しても守備のマイナスはおそらくこれから更に大きくなっていくことが予想されるため、やはり後継者準備は必須だろう。この3人以外の外野手になると山崎晃・塩見・中山らが代打・守備固めやたまにスタメンで起用されていて、彼らが次世代の外野候補として期待されているのが分かる。その彼らの成績を見ると山崎晃は打率.250を切っておりOPS.600を超える程度でやや打撃に関しては弱いが、守備面ではセンター・ライトのUZRがプラスで守備に関しては貢献できる段階にきている。塩見は打率1割台、OPS.500を切る打撃成績でかなり弱いが、守備はセンターの指標がプラスでこちらも守備で貢献できるところまできている。打撃面も2軍ではOPS1.000超えの大活躍なので、あとは1軍に対応できてくれば一気に上がってくる可能性があるだろう。中山は少ない打席ながら打率3割、5本塁打OPS.800台の結果を残した。シーズン通して出れば20本以上は確実に狙えそうな本塁打のペースで打撃面で大いに期待ができる。守備面でもレフトのUZRがプラスで、バレンティンの後釜として文句の無い打者になれる可能性があるだろう。現レギュラー外野陣がこれから衰えてくるとしても、後継者候補の彼らが順調に育ちつつあり昨年までに比べると光明が射してきたと言えそうだ。ドラフトは現状ベテランと若手がいる形なので優先度はそこまで高くないだろう。指名するとしたら更に先を見据えて濱田と同じ世代で活躍できそうな高校生外野手が良さそうだ。

ドラフト重要度:低(中位~下位指名)

ドラフト指名対象:1軍戦力は整いつつあるので、将来を見据えた高校生外野手

 

1位指名予想

森下 暢仁(投・明治大)

ヤクルトは高校生投手の指名が割と多い球団だが、今年ははっきり言ってそんな余裕は無いだろう。1軍ローテが壊滅的状況で2軍でも若手の伸び悩みがあるこの状態では、1にも2にも即戦力として働ける先発が必要だ。そのため今年指名するなら森下しかない。森下は1年目から2桁勝利を狙えるだけの球威・変化球のキレ・スタミナを備えており、即戦力として見るなら間違いなくNo.1の投手だ。高校生の奥川も即戦力候補として考えられるが、より確実な即戦力を指名する必要があるため森下に行くのが1番良いだろう。森下だけでも先発は足りないと思われるので、2位以降でも投手指名は必須だ。

指名パターン予想(3位指名まで)

パターン①

1位 森下 暢仁 (投・明治大)

2位 勝俣 翔貴(内・国際武道大)

3位 杉尾 剛史(投・宮崎産業経営大)

森下を1位指名で無事引き当てることに成功した場合、2位では打撃力のある三塁手の勝俣を指名すると考えた。ヤクルトのサードは今季太田が守っていたが、打撃面を考えるとやはり物足りないところがあり、また今季控えとしてサードを守っていた大引が退団することを考えると、内野の即戦力も必須になってくるだろう。そこに大学生内野手で1番打撃力が評価されている勝俣は打ってつけといえる。3位指名では投手力強化のために杉尾を指名すると考えた。杉尾は一昨年・昨年と大学野球選手権で投げており、どちらも好投していて地方の大学リーグながら都市部に負けない球を投げれている。安定した投球も良く、現ヤクルト先発陣に欲しいタイプの投手だろう。

 

パターン②

1位 宮川 哲(投・東芝

2位 東妻 純平(捕・智弁和歌山

3位 松田 亘哲(投・名古屋大)

1位森下を外した場合、外れ1位でも即戦力の投手を指名すると考え、最速154kmの速球派右腕の宮川と予想する。宮川の直球は社会人野球でもトップクラスの球威で、その直球でグイグイ押しつつ決め球のカットボールやフォークで三振を取れるスタイルだ。都市対抗・日本選手権でも毎回三振を取れるようなコンビネーションで即戦力として活躍できる可能性は非常に高い。力投型なので先発もリリーフもいけるためヤクルトの投手事情に合わせた起用が可能だ。2位指名では打撃の良い高校生捕手の東妻を指名すると予想した。ヤクルトの捕手は現在中村がいて問題は無いが、東妻は高校入学当時はショートを守っていてそこから捕手へコンバートしており、内野手もやれる可能性は高いだろう。ヤクルト三遊間が現在固定できてない状態を考え、将来的にも山田のFAの可能性などを考えると今のうちに身体能力高く打撃に秀でた選手を育てておく必要がある。そんなチーム状況に東妻は打ってつけと言えるだろう。3位では大学生左腕の松田と予想した。先発・リリーフともにヤクルトは左腕が少なく、ベテラン左腕の石川がそろそろ衰えてくることを考えると、後継者候補になる左腕は必要だ。最速148kmだがキレのある直球で球速以上の球威に見えるタイプで、スカウトからは伸びしろも評価されている。

パターン③

1位 石川 昂弥(内・東邦高)

2位 立野 和明(投・東海理化

3位 岡野 祐一郎(投・東芝

ヤクルトの場合大学生か社会人の投手を1位指名する可能性が8割方だと考えているが、仮にそれ以外の選手を指名するとしたら東邦の石川だと考えた。U-18で4番を打って活躍した右の大砲で高校生打者の中でも打撃力はピカ1だろう。現在固定できていないサードや山田の後釜、高齢化している主力打者陣のことを考えると、右の大砲候補は必須で石川はそれに当てはまる選手だ。野手育成に関しては定評のあるヤクルトだけに、将来村上と2人で主軸を任されるまでに育て上げる期待が持てるだろう。2位指名では最速152kmで伸びしろもある高卒社会人の立野を指名すると予想した。神宮を本拠地にしているため球威があり三振を取れるタイプの投手はヤクルトに必要で、それに合致した投手と言えるだろう。やや安定感に欠ける面はあるが、その分伸びしろもあり活かせれば将来エース級にもなる力を秘めている。3位指名では社会人3年目で安定感のある投手の岡野を予想した。2位の立野とは違い球威は立野には及ばないが変化球が多彩で安定感があり、こちらはすぐにでも戦力になる期待が持てる。社会人で異なるタイプの2人を指名することで、投手運用の負担も減らせる期待が持てる。

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