データで語るドラフト・育成論

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【プロ野球2019】広島の戦力分析とドラフト指名予想

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9月に入りドラフトが間近に迫ってきました。

そこで各球団の戦力分析とドラフト指名予想をしていこうと思います。

今回は広島東洋カープです。

 

現状の戦力分析

[先発投手]

6番手まで固まるも、まだ安定感が無く控えや若手との格差も大きい

今季の広島先発陣は大瀬良・ジョンソン・床田・野村・九里・アドゥワと6人を回していく形で運用していて頭数が揃った形にも見えたが、彼らは好不調の波が激しく一時は2桁連敗に突入するなどなかなか安定していなかった。この中ではエースの大瀬良も大量失点する試合があり、今一つ確固たるローテが組めていない状態だ。ローテの6人の成績を見ると床田・ジョンソン防御率2点台と安定。大瀬良・九里防御率3点台でこちらもまずまず。野村・アドゥワ防御率4点台で好投している投手もいるが、不安定な投手もいるといった状態になっている。投手としての能力を表す指標のSP RARではリーグ4位で下位に入っている。このことから、マツダスタジアムの広さにやや助けられてる部分もあると言えるだろう。現ローテ以外にも先発の台頭が望まれるが、山口翔が昇格して何試合か先発登板したが防御率が高く、まだ1軍ローテは難しい状態になっている。このことから先発の層がやや薄い。

2軍では薮田・ローレンス・ケムナ・中村祐・モンティージャ・遠藤など多くの投手が先発で育成されていて、次世代のローテ候補として期待されているが、ケムナは今季まだ1軍登板しておらず、薮田・中村祐・モンティージャ・ローレンスらは今季1軍で登板したが防御率が悪い。遠藤はリリーフで起用されていて定着しそうな期待はあるが、このようにどの先発候補もやや伸び悩んでいる。頭数は多いので、これ以上無用に投手人数を増やすことはせず、良い投手をしっかり狙って獲得していきたいところだ。即戦力か素材型かは判断の分かれどころだが、しっかりと見極めて良い投手を指名したい。

ドラフト重要度:中(上位指名)

ドラフト指名対象:質の良いローテ投手。即戦力・素材型を総合的に見て良い投手を

 

[救援投手]

リリーフの頭数は多いが安定して任せられる投手が少ない。守護神不定の悩みも

現時点で20試合以上登板しているリリーフが9人で、他球団と比較すると割と多めになっている。殆どのリリーフが防御率は2点台後半~3点台の防御率で悪くないようにも見えるが、リリーフ投手の指標のRP RARではリーグ5位になっている。こうなってる理由として挙げられるのは、絶対的に抑えられる投手が少ないこともあるだろう。例えば他球団では防御率1点台だったり、最低でも2点台前半のリリーフを抱えているが、広島だと最も良いのが2点台中盤の中村恭のみになっている。とはいえ菊池保・レグナルト・一岡らも2点台後半辺りの成績で決して悪くは無く、むしろ揃っている方とも言えるが、それでも指標はリーグだと下位になっている。この理由として考えられるのが、昨年までの抑えの中崎が今季は不調で2軍落ちを経験したことだろう。これによってフランスアが守護神代理を務めているが、フランスアもセットアッパーとしては優秀だが、抑えだと打ちこまれる姿も見られる。中崎が復調しないとなかなか立て直せない部分で、今ドラフトでは守護神候補の投手も視野に入れて良いだろう。

2軍では矢崎・平岡・ヘルウェグ・藤井・島内らが主に起用されているが、矢崎・平岡は2軍でも打ちこまれ気味であまり良くない。ヘルウェグ・藤井・島内は1軍昇格もあったがなかなか結果を残せず2軍に落とされてしまった。こうなると即戦力のリリーフでそれなりに力のある投手が欲しいところだ。中崎と抑えを競えるようなリリーフが獲得できれば、継投も選択肢が増えてきて勝ちパターンも安定してくるだろう。

ドラフト重要度:高(1位~上位指名)

ドラフト指名対象:抑えの中崎と競えるような守護神候補。抜群の安定感を求めたい

 

[捕手]

正捕手會澤が定着しつつ石原・磯村が控えの体制も、會澤のFA次第で捕手不足に

 會澤が今年も打撃の良い捕手として1軍正捕手に定着している。打撃面でOPS.800も打てているので打線で5番を任されることもあった。この會澤が今年はほぼスタメンマスクで起用されていたが、投手がジョンソンの時は石原を起用し、アドゥワや山口など若手投手の時は磯村を起用するなど、投手ごとに使い分けていた。會澤の負担を軽減しつつ次期正捕手候補の磯村を育てている形で、とても良い使い分けと言えるだろう。この体制なら将来的にも問題無いように見えるが、1つ懸念がFA権を取得した會澤だ。これだけ打てる捕手ということで、會澤がFA権を行使すれば争奪戦になることが予想される。これに関してはどうなるか未知数だが、會澤が抜けるとなると広島にとってかなり痛いだろう。最悪の想定として會澤が移籍した場合は、来年以降はおそらく磯村を正捕手として起用していくことになると思うが、控えの石原が来年40歳でこちらも年齢的に衰えがきてもおかしくない。他の捕手では主に2軍で起用されている白濱・船越・坂倉・中村奨らがいるが、全員1軍経験が少なく未知数な部分が多い。現在捕手人数が7人ということを考えると、今ドラフトで間違いなく1人は指名しなくてはならないだろう。それもあわよくば1年目から1軍でマスクを被れる捕手が必要になってくる。

ドラフト重要度:高(上位~中位指名)

ドラフト指名対象:會澤FAと今後の捕手人数不足に備えて即1軍で起用可能な捕手

 

[内野手]

田中広の絶不調でルーキー小園起用・オフには菊池メジャー挑戦と二遊間課題山積

広島の今年の最大の誤算は何と言っても、昨年までショートのレギュラーだった田中広輔が開幕から絶不調だったことだろう。8月までずっと打率1割台を継続し、とうとう2軍落ちして、8月末には右膝の手術を行って今季絶望となった。2016年~18年までショートでフルイニング出場してた選手だけに代わりがおらず、急遽代役として抜擢されたのが高卒1年目の小園だった。その後小園が高卒ルーキーとは思えないほどの頑張りを見せてくれたため、ショートの崩壊には至らなかったが戦力ダウンしたことは確実だろう。来年を考えても手術した田中が普通に戻ってこれるかは分からない。小園にとっても、1年目でいきなり1軍起用なので相当の疲労が溜まっているはずで、2年目にその影響が出る可能性もあり、ショート事情は非常に不安定になっている。他にショートを守れる選手として三好や、2軍の桒原サンタナなどいるが、結局ルーキーの小園を起用している時点で彼を出さざるを得ない状況を物語ってると言える。せめてもう1人ぐらい1軍でショートを守れる選手が欲しいところだ。

それに加えて今オフにはセカンドの菊池がメジャーへ挑戦する。昨年オフに球団と話をして今オフのポスティングを伝えたため、これは確実と言えるだろう。WAR4.0近い成績を残している菊池の代わりというのは難しく、こちらも代役の候補は少ない。昨年ドラフトでは高校生内野手を4人も指名して、現在2軍で育成中だが、彼らを頼りにするのはまだ早いだろう。

ドラフト重要度:中(上位~中位指名)

ドラフト指名対象:育成入らずで1軍で即起用可能な二遊間を守れる選手

 

バティスタのドーピング判定・固定しきれない三塁と打撃面での不安露呈

今シーズン、丸が抜けた3番を埋めたのがファーストのバティスタで、打率.269ながらチームトップの本塁打数26本、OPS.850超えと主軸として活躍していたが、8月にドーピング判定で陽性となってしまった。これにより2軍降格となりチームにとっては3番打者を失うという事態になった。NPBからは6ヶ月間の出場停止という処分が下されたが、球団がこれからどういう処分を下すかも影響してくるだろう。また仮に来年から試合に出れるとしてもキャンプの練習試合や2月までのオープン戦に出れず、来季に影響が出る可能性は高い。仮にバティスタと来年契約しない場合は、代わりの外国人選手を獲得するか、メヒアサンタナなど今の外国人選手の活躍を期待するしかないだろう。

サードは昨年西川が守っていたポジションだったが、丸の移籍に伴って西川が外野転向したため、レギュラー争い状態になっている。現時点では安部が多く起用されているが、小窪メヒアも起用されていてまだレギュラーが固定されている状態ではない。WAR的にも3人ともそこまで際立って良いわけでは無いので、台頭してくる選手を期待したいところだ。補強できるとすればしたいところだが、他のポジションの補強が優先されるところなので、なるべく自前で育てたいところだろう。

ドラフト重要度:低(中位~下位指名)

ドラフト指名対象:打撃重視で一芸に秀でたタイプを獲得しあわよくば1軍へ

 

[外野手]

外野転向の西川がまずまずの存在感。鈴木誠は文句無しであと1枠をどうするか

今季は丸が移籍した穴を埋めるために西川を外野起用することとなったが、この配置換えは成功と言って良いだろう。守備負担が減った西川が打率.300 OPS.800の好成績を残している。シーズン序盤はレフト起用だったが守備面も段々改善され、8月からは本格的に1番センターとして固定起用されるようになった。丸に比べると劣る部分はあるものの、これだけ活躍しているのは嬉しい誤算と言えるだろう。ライトの鈴木誠也は相変わらずの文句無しの打撃ができていて、打率.333 本塁打25本以上 OPS1.000超え、WARだと12球団の選手トップの7.4という数値になっている。西川鈴木誠の活躍で外野の2枠は盤石とも言えるようになってきたが、問題は残る1枠だ。西川をレフト・センターで起用している間、どちらかに入っていたのは主に野間松山だったが、正直2人とも厳しい内容だったと言わざるをえない。打率.250前後 OPS.600台で、守備でもUZRは大きくマイナスになっていて、攻守両面で厳しい結果になってしまった。レフトならもっと打てないといけないし、センターならもっと守れないといけないという点でどちらも補強ポイントになってくるだろう。他にこのポジションで起用されていた選手だと、長野・高橋大・坂倉などがいるが、3人ともなかなか結果を残せなかった。高橋大や坂倉はまだこれからの成長が見込める選手だけに、彼らが台頭してきて欲しいものだ。

2軍では大盛・正髄・永井・桒原らが外野手で起用されていて、成績的にはまだ1軍で活躍を見込めるほどではないが、全員若いので育てがいのある選手たちになっている。鈴木誠西川もまだ20代前半で若く、残る1枠の選手にも若手が定着してくれれば広島にとっては長期的にアドバンテージが取れる外野陣になるだろう。補強しても良いが、若手がこれだけいるので内部競争で勝ち上がってきて欲しいものだ。

ドラフト重要度:低(下位指名)

ドラフト指名対象:外野の残り1枠を争える選手。候補がいなければ指名見送りも

 

1位指名予想

奥川 恭伸(投・星稜高)

丸の移籍など昨年からの戦力ダウンがあり、4連覇が難しくなってきたこの状況。先発を見ると、あと1人ローテに入ってくればまた盤石な投手陣が作れそうな期待がある。その中で広島スカウトの評価としては、奥川は今すぐローテに入って10勝ぐらいできるという即戦力として期待できる評価だった。今オフに野村がFA権を行使する可能性もあり、そうなれば先発ローテが更に苦しくなるのは明白で、その対策のためにも奥川を指名してくる可能性は高いだろう。

指名パターン予想(3位指名まで)

パターン①

1位 奥川 恭伸(投・星稜高)

2位 郡司 裕也(捕・慶応大)

3位 小深田 大翔(内・大阪ガス

ローテ10勝クラスと評価した奥川を獲得できれば、先発投手陣はひとまず安泰になってくるだろう。この流れで2位指名となると、會澤がFAした際に備えての捕手を指名する可能性が高いと考える。そうなると今年のドラフトの注目捕手の郡司を指名しそうだ。郡司は慶応の4番を任されており打撃面でも期待ができる捕手で、會澤がFA権を行使しなかった場合でも次世代の打てる捕手として期待が持てるだろう。上位でバッテリーの指名ができたら、3位ではこちらも菊池メジャー挑戦で不安が出てくる内野手だ。社会人の小深田は内野をどこでも守れる守備力を備えていて、小柄ながら打撃もしっかりしている。菊池が抜けると打撃・守備の両面で大きな痛手になってしまうため、小深田のようなタイプが求められるだろう。

 

パターン②

1位 海野 隆司(捕・東海大

2位 杉山 晃基(投・創価大)

3位 伊勢 大夢(投・明治大)

奥川の指名を外した場合、外れ1位では思い切って捕手を指名する可能性もあるだろう。東海大の海野は攻守両面で非常に評価が高く、捕手としての総合力なら今ドラフトでもNo.1は間違いないだろう。FA権取得の會澤が仮に移籍した場合、磯村と組んで1軍で守れる捕手が必要で、海野ならうってつけと言えそうだ。こうなった場合は2位で即戦力投手として期待が持てる杉山にした。杉山は球威の良い投手だが、変化球中心の投球もできて投球の幅が広い。広島は先発もリリーフも不安になってきているため、こうした色んな場面で起用できそうな杉山は求められる投手だろう。同じく3位の伊勢も直球の球威が光る投手で、こちらはスカウト部長が高く評価している。抑えが不安定になってしまった今季を考えると、次期抑え候補として指名する可能性もあるだろう。

 

パターン③

1位 西 純矢(投・創志学園

2位 柳町 達(内・慶応大)

3位 村西 良太(投・近畿大

佐々木や奥川同様に広島スカウトがずっと上位候補として注目してるのが西で、仮に奥川の指名が外れた場合は、西も同等の力があるとみなして指名する可能性もある。1年目からローテ入りは流石に難しくとも、2年目など早期に1軍戦力となることが期待できる投手だ。この場合3位でリリーフタイプを指名すると考えて、2位に打撃の良い内野手柳町を指名すると考えた。柳町は三塁と外野を守れる打者で東京六大学通算100安打を既に達成していて非常にバッティングセンスの良い打者だ。広島は三塁が固定できてない状態でもあるため、柳町を来年からレギュラー候補として競わせるのも面白いだろう。3位指名では上記の通りリリーフタイプで、それにピッタリな投手が村西だ。最速152kmのサイド気味のスリークォーターで、奪三振率がとても高い。広島のリリーフ陣に厚みを持たせ、あわよくば抑えにも抜擢できる可能性がある投手だ。

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