6月のセ・パ交流戦も終わり、各球団シーズン折り返しを迎えた。
そこで、現時点での各球団の戦力分析を行ってみた。
今回は広島東洋カープについてまとめてみた。
現時点の成績・評価
開幕から乱高下の順位変動。ハマると強いが投打で不安定さを露呈
今年の広島は開幕スタートダッシュに失敗し4月には最下位に落ちたが、4月後半から一気に成績を上げ、5月には11連勝で一気に首位に昇りつめることに成功。しかし交流戦に入るとまた成績が落ち12球団で最下位に沈むという不名誉を味わい、セリーグでも首位陥落となってしまうなど、上り下りが激しいのが特徴と言える。
この上り下りの激しさの理由として挙げられるのは、先発・打線・抑えの不安定さと言えるだろう。先発投手については開幕からずっと安定してるのは大瀬良・床田の2人のみで、ジョンソン・野村・アドゥワなども先発で投げてきているが、ここまではやや不安定だ。ジョンソンは4月は調子が悪く、なかなか5イニングを投げ切れない登板が続いていた。野村は調子を落としたことで2軍行きも経験し、アドゥワはリリーフで投げるようになるなど、まだまだ安定してるとは言い辛い。全員調子が良い時は11連勝できるほどの安定感があるものの、なかなかそういう時期が長続きできず世代交代の波が押し寄せてきてると言えるだろう。
野手陣については昨年3番打者でチームトップの本塁打数・OPSだった丸が移籍したことと、開幕から1番ショートの田中が打撃不振に落ちたことで、4月は上位打線がなかなか機能しない状態が続いた。だが5月に入って1番に打撃好調で脚も使える野間を置き、打率・本塁打数が上がってきたバティスタを3番に置いたことで得点力を上げることに繋がった。交流戦に入ると1・2番の野間・菊池と4番の鈴木誠の成績が落ちてしまったため、また上位打線が機能しづらくなってしまった。田中が一向に調子を戻してこないことでとうとう連続試合出場が途絶え、2軍から高卒ルーキーの小園を上げて1番・遊撃手を任せる事態にもなった。このように打線については主力の調子の上げ下げが得点力にダイレクトに影響していて、主力と他の選手との差が大きいというのもこの不安定さに繋がっているだろう。
上記の先発と野手の不安定さも大きいが、今年は更にチームの抑えの中崎が不調で交流戦中にとうとう2軍落ちになる事態となり、3連覇を支えた抑えが抜けるという痛手を被っている。4月からリリーフ失敗が多く、また無失点でも3者凡退で切り抜けた試合がとても少なかった。首脳陣としてはそれでも中崎の復調を待つために、交流戦中に中継ぎへ配置転換するなどしていたが、なかなか改善せず大量失点してしまった登板もあり、2軍降格となった。
このようにチームの要ともいえる先発・上位打線・抑えが安定していないことが、チームの成績の変化をそのまま表してると言える。逆を返せばそこが安定してくれば大型連勝できるぐらいの地力は備えており、現に5月には11連勝があり首位に返り咲いた。安定してくるとまだまだセリーグトップの実力は備えているし、優勝候補筆頭には変わりない。
広島の戦力層
【先発】
大瀬良・床田・ジョンソンの3本柱は安定。4番手以降が不安定も候補は多い
大瀬良・床田・ジョンソンの3人がローテに定着していて、他球団と比べても盤石な3本柱と言えるだろう。ここに野村・アドゥワが安定してくれば先発はほぼ隙が無い状態になるが、なかなか定着できていないのが歯痒いところだ。九里も先発要員だが序盤はなかなか結果が残せず、一時期リリーフで起用されていた。年齢的にはジョンソンがそろそろ衰えが見える頃で、若手先発の台頭が望まれる。
若い年代だとまだ高卒2年目だが山口が次世代先発候補として期待されている。5月末に1軍で初先発登板し、7回を無失点で投げ切る活躍を見せた。その後打ちこまれる試合もあったが交流戦も途中まで1軍帯同していた。この経験を活かして、今度は本格的にローテを担える投手として1軍に上がってきて欲しいところだ。九里は4月はなかなか結果を残せなかったが、1度リリーフを経験してからまた交流戦中に先発に戻っており、今のところ試合を作る投球ができている。4番手に定着すれば、リーグトップの先発投手陣になってくるだろう。4月には安定していた野村・アドゥワも調子を戻してくれば、またローテに戻ってくることは可能だろう。他の先発候補だと2軍ではローレンス・遠藤・中村祐・薮田らが先発で調整しているため、彼らにも早く1軍で投げれる力をつけてきて、5・6番手争いに入ってきてもらいたいところだ。このように4番手以降はやや不安定なところがあるものの、候補が多く期待はできる。
【中継ぎ・抑え】
抑えの中崎が崩れるも中継ぎ陣は盤石。中崎の分をカバーできる体制
中継ぎ陣は優秀な方で、フランスア・一岡・レグナルトの3人が安定している。フランスアと一岡は防御率2点台、レグナルトに至っては防御率0点台と抜群の安定感を見せていて、勝ち継投は盤石になってると言えるだろう。他のリリーフ陣だと菊池・中村恭が同点やビハインドでの繋ぎとして多く登板している。菊池は交流戦最後に打ちこまれてしまったが、それまでは安定していたので悪いとは言えないだろう。抑えの中崎が2軍降格になってしまったが、現状の1軍中継ぎ陣なら何とか中崎の穴を埋めることも可能だと思うし、チームの中でも1番安定している箇所と言える。あとは現リリーフにもしものことがあった場合に備えて、2軍でリリーフを準備させておくことが大事になるだろう。
【捕手】
會澤中心の安定した捕手陣。磯村の育成もできていて問題無し
攻守両面で安定感のある會澤が正捕手で、現時点でも打率.280 8本 OPS.869という捕手としては十分すぎるくらいの打撃力で、セリーグトップの捕手と言えるだろう。會澤がほぼメインで起用されているが、先発がジョンソンの時に石原、アドゥワの時に磯村と、相性を考えた起用もしている。會澤が常に出続けるよりもこの起用の方がシーズン通して活躍が見込めるし、ベテランの石原、若手の磯村の活躍の場も作れるため悪くない起用と言える。現時点で問題点は特に無いポジションだ。
【内野手】
課題は遊撃・三塁。ルーキー小園を起用せざるを得ないのは苦しい状態
一塁のバティスタは鈴木誠に並ぶ本塁打数(18本)で、チームの3番打者を任されており不動のファーストになってきている。二塁に菊池に関しても今年は打撃が改善して守備も持ち前の広い守備範囲で大きく貢献できていて、今のところ全試合スタメン出場している。問題なのがショートとサードで、ショートは上記で述べてきたように田中広輔の打撃不振が大きな誤算になっている。打率1割台で出塁率も.300を切っており、とても1番打者を任せられる成績と言えないだろう。そのため2軍から高卒ルーキーの小園をスタメンショートに抜擢することになったが、高卒ルーキーに頼らなければならない現状がますます辛い状態を表してると言える。サードに関しては開幕から固定できない状態で、安部や小窪が起用されているものの2人とも打撃力が物足りず、他球団と比べるとウィークポイントになっている。野手陣を見るとこの遊撃と三塁を1番どうにかしたいポジションと言えるだろう。2軍では高卒ルーキーの林・羽月・小園・中神らが積極起用されていて完全な育成モードになっている。将来に向けてこうした起用は悪くは無いが、1軍戦力で穴が出てきている現状を考えると、1軍にすぐ上げられるような選手も準備しておいた方が良いだろう。
【外野手】
西川・野間・鈴木誠の新外野陣でスタートも。センターが不安に
今季は丸が移籍したセンターの穴に野間が入る形で開幕から続いてきたが、まだ野間も好不調の波があり6月の交流戦では調子を落としてしまった。交流戦終盤ではレフトを守っていた西川がセンターに入る事態にもなり、なかなか安定できてるとは言えない状態だ。西川は昨年サードを守っていたが今年から外野を守っている。打撃は昨年から悪くない状態で外野守備もソツなくこなせているが、レフトとして考えるとややパンチ力不足なのは否めない。昨年までは松山がある程度レフトを守って長打を打てていたが、今年は調子が上がってこず、また巨人から丸の人的補償で獲得した長野も現時点ではそこまで貢献できていないのが現状だ。ライトは不動の鈴木誠也が現在OPS1.000超えと昨年と変わらぬ大活躍ができていて、ここは盤石のポジションと言えるだろう。レフトとセンターに関しては今後2軍から上げてくる選手も考える必要があり、高橋大は6月に昇格して現在良い結果を残せている。ここからレフトなりセンターで定着できればチームにとっては助かるだろう。
今後の展開予想
4連覇を達成するための最大の難所。ここを突破すれば常勝へ
昨年までは投打どちらも良くレギュラー陣が安定していて、それが3連覇を支えていたが、今年はそのレギュラー陣の中でも抑え・遊撃・三塁・中堅のポジションでレギュラーに不安があり、過去3年間と比べても最も苦しい年と言えるだろう。これは丸の離脱の影響だけでなく、世代交代の難しさを如実に表していて、これまで勝ってきた球団ならではの悩みと言える。
世代交代については一朝一夕でどうにかなるものではなく、数年単位で取り組むものなので今シーズンに限って言えばすぐに好転する可能性は低いだろう。後半戦もまだ不安定な状態が続くことが予想される。
とはいえ上手くハマった時は一気に成績を上げる爆発力を備えているし、交流戦明けてまたリーグ戦に入っていくと、戦い慣れた相手で調子を取り戻す可能性もあるだろう。戦力層としては主力と控えの差が大きいとはいえ、優勝できる実力は十分備わっている。2軍で若手を重点的に育てているので、ここを乗り切れば広島はまだまだ長く強いチームで居られることも可能だろう。