データで語るドラフト・育成論

成績・データからドラフト候補や若手選手の育成状況についてまとめているブログです。

【プロ野球】3軍制のメリット・デメリット・課題

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2020年のシーズンも終盤に入りつつあるが、セ・リーグの方は巨人が2位と10ゲーム差以上つけてマジックも点灯している。今シーズンは巨人の独走が目立つシーズンとなった。この巨人の強さについては色々と理由があると思うが、中でも3軍制が機能してきていることについて触れておきたいと思う。

巨人の主な3軍出身選手

増田 大輝

2015年育成ドラフト1位指名、徳島インディゴソックス出身の増田は今季27歳で、1軍ではレギュラーとして起用はされていないが主に代走・守備固めでの起用が多く、9/23時点で56試合に出場しているが、盗塁数は16個(リーグ2位)、盗塁成功率は84.2%と足での貢献が凄い。また守備でもショートの坂本の守備固めに入ることが多く、開幕からずっと1軍登録されていて重宝される存在になっている。こういう選手がベンチに1人いるかいないかでは、作戦を考える首脳陣にとって選択肢が全然違うだろう。育成選手は一芸に秀でた選手を指名すると良いと言われるが、まさに増田は一芸で1軍に上りつめることができた選手だ。

 

松原 聖弥

2016年育成ドラフト5位指名、明星大出身の松原は今季25歳で、昨年まで1軍出場は無かったが今季は7月後半に昇格してきてからずっと1軍に定着している。主にライトを守り、外国人のパーラとの併用という形だが8月後半からはスタメン起用が増えてレギュラーとして起用されてきている。成績としては突出したものは無いものの、原監督からバットコントロールを評価されていて、四球の多さや足の速さなどから2番打者で起用されるようになり、守備でも今季はライトゴロを記録するなど足や肩を活かせている。松原は2軍でも好成績を残してきた選手で、今季それが1軍で開花した形だ。


C.C.メルセデス

2016年オフに巨人の海外トライアウトに合格し、2017年から育成契約で入団してきた外国人投手で、今季26歳になる。2018年からすでに1軍支配下登録となり先発ローテで活躍しており、今季も開幕ローテ入りして現在先発4番手の投球回数になっている。エース格の勝てる投手とは言えないものの、試合を作れる力がありQS率は50%超えしてローテを任せやすい投手だ。まだ20代中盤で今後先発で長く活躍することも期待できるし、コスパを考えると使い勝手の良さもあり首脳陣は起用しやすい投手と言える。

 

この3人はいずれも2015~16年に巨人が新たに3軍制を再建し始めた頃に獲得してきた選手で、4~5年目で3軍制の効果が出てきていると言える。この年以降も育成選手をドラフトで指名し続けており、育成外国人も毎年積極的に獲得しているため、今後も彼らに続く3軍出身の選手が継続的に出てくる可能性はあるだろう。

3人共バリバリのレギュラークラスとまでは言えないが、現状で1軍に必要な選手になっているのは間違いなく、彼らがいるのといないのとでは今季の巨人の勝敗数にも影響してきたのは間違いない。

 

3軍制の課題と解決策

このように育成出身から1軍選手が出てくるようになるのなら、3軍制を導入して育成選手を毎年大量獲得することはチーム強化に適っていると言える。では逆に3軍制導入の課題は何になるか。

 

①施設・設備・試合日程・指導者の確保

まず考えるのは3軍を運営していくのに必要なこれらの確保だ。3軍制とは球団が1軍・2軍に加えてもう1チーム多く持つようなもので、当然チームが使う球場や設備の準備が必要だし、対戦チームも用意して試合日程を組まなければならない。また3軍の監督やコーチなど指導者も必要だ。この辺りはどうしても資金が必要で、資金力が無い球団が3軍制に手を出しにくい理由がまさにこれだろう。現状3軍でこれらを揃えているのはソフトバンクと巨人ぐらいで、だからこそ3軍から選手が台頭しやすい環境になっていると言える。この点は中途半端にしてしまうと育つ選手も育たなくなるので、しっかりと資金を出せる球団でないと実施できないだろう。

ここまでの準備ができない場合で、3軍制を作るとするなら独立リーグや海外への選手派遣などが代案になりそうだ。NPBでない球団と提携して選手を派遣させ、そこで試合に出してもらって経験を積むという方法で、DeNAがややこの形にシフトしつつある。ただ、この場合は受け入れる側にも都合や限りがあり、自チームから離れて派遣することになるので指導面でも制約がつく。うまく折り合いがついて密接にやり取りできるなら問題解決できそうだが、巨人やソフトバンクの3軍制と比べると次善の策といったところだろう。

 

②大量の戦力外・育成落ちの発生

3軍を維持するためには大体20人前後の大量の育成選手を保有することになるが、それだけ保有していると毎年オフには大量の戦力外や育成落ちが発生する。ソフトバンクや巨人は毎年10人以上は確実に戦力外選手を出しており、多い時には20人近くまでに及ぶ。無論、3軍制維持のために育成再契約などの場合も多いが、戦力外通告を受けた大半は球団を去ることになる。こうして球団を去ることになった選手に対してのケアは重要になってくる。ソフトバンクや巨人はこうした退団選手の受け入れ先も考えて指名しているようだが、今後3軍制を導入することになる球団も考えなければならないことだ。

プロ野球において支配下登録選手と育成選手とでは入団時点から待遇面で大きな差があり、育成選手は入団時に支度金を受け取るものの大体300万前後で年俸も240万~300万程度になっている。最初は寮生活で衣食住は球団が用意してくれるものの、世間一般企業の1年目年収などと比べても結構低めで、しかも成績が悪ければ翌年以降下がったり、首を切られるリスクもある。なのでプロ志望届を提出する高校生・大学生の中でも、育成契約となると躊躇する選手はおそらくいることだろう。

こうした問題は今後3軍制が広まっていくにつれて沢山出てくると思われる。そのためNPBとしても対応が必要になってくる時期がいずれ来そうだ。個人的な案だが、具体的にはプロ志望届に「育成契約の可否」についての条項を加え、育成指名の対象となるかどうかをドラフト前に判別することなどだ。現状すでにドラフト会議では支配下登録と育成とで明確に区分けして指名しており、プロ志望届にも同様に区分けが無いのはむしろおかしい。こうすれば学生側は育成契約は拒否したい選手でも志望届を出すハードルが下がるし、球団側も指名後の拒否のリスクが減ることになり、双方に良い影響を与えることになる。プロ野球の門戸を広げるという意味でも、導入して欲しい。

 

まとめ

ソフトバンクや巨人などが強くなっている理由は様々あるが、その1つに3軍制の導入というのも入っているのは間違いない。現に1軍で活躍している元育成選手が複数名いて、彼らがいるのは3軍制を導入して獲得できたからだ。これに楽天なども3軍制導入へ舵を切っているし、日本ハムは育成選手指名を解禁して早くも育成から支配下登録を掴んだ選手もいる。結局のところ、保有する選手を増やせばそれだけ活躍する可能性のある選手を増やすことに繋がり、チームの強化へ繋がっていくことに各球団が気付き動き始めている。

なので今後は育成選手の指名人数が増えてくるし、そこから支配下登録を掴んで1軍で活躍する選手も増えてくるだろう。そしてそれができる球団とできない球団とで差がついてくる可能性もある。

記事に挙げたように3軍制導入には課題やデメリットもあるが、それらについて各球団はこれから更に真剣に考えて、導入するか検討していくことになるだろう。

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