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【ドラフト2020】横浜DeNAのドラフト1位指名予想

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※非常に長い文章です。前半は現状の戦力分析になっていて、ドラフトの具体的な話は後半の「指名傾向・優先度」以降になります。

 

10/18時点でセ・リーグ4位の横浜DeNA

昨年は2位で、直近4年間でAクラス3回と好位置をキープしており、過去の弱小球団のイメージは払しょくされてきた。Aクラス常連になってきており、年々優勝への機運が高まっている反面、なかなか優勝への差が縮まらず歯がゆい思いもしている。今季も優勝はかなり難しくAクラス争いに留まっており、球団としては足踏みしている状態と言えるだろう。

そのため今ドラフトは優勝へ向けての戦力補強の意味合いが強くなりそうだが、果たしてどういったドラフト指名となるか注目だ。ラミレス監督5年目ということもあり、今オフは監督人事にも注目が集まっているが、DeNAは補強・編成はフロント主体のため人事が直接的な影響を及ぼすことは無いだろう。

現状の戦力分析

10/19時点でDeNA49勝 49敗 5分で勝率5割だが4位の位置にいる。8月までは2位の位置にいたが、投手陣の故障離脱など誤算があり負けがかさんでいって、貯金を使い果たし借金生活にもなっている。個々の選手を見ると若い選手が多く、実力も備わってきており中長期的に安定した戦力として期待もできるが、選手の故障や不調によってなかなか万全な期間が少なく、勝率5割周辺に留まってしまっている。そうなってしまった原因について以降に記載していく。

先発

揃わぬ先発ローテ…

先発防御率はリーグ4位であまり良い成績では無いが、これは先発ローテが固定できなかったことが大きく影響している。序盤までは今永・平良の2人が安定した成績を残しており、これに加えて濵口・井納・ピープルズ・大貫らが定着して先発の充実度はリーグトップと言っても過言では無かった。だが今永・平良が揃って離脱し、ピープルズは不安定な状態が続き2軍落ちし、濵口もローテは守るものの5イニングが限界という投球が続いていた。離脱した投手に代わって阪口・櫻井・中川虎らが昇格してきたが皆、あまり良い結果を残せず2軍に戻っていった。9月以降、ようやく上茶谷・坂本が復帰してきて京山も何とか1軍に定着してきたが、なかなか6人揃う機会が少なく今季はブルペンデーの試合も何度かあった。

大貫の孤軍奮闘

先発成績を見ると、規定投球回に到達している投手は1人もいない。最も投球回が多いのが大貫で、今永・平良が抜けて以降は実質的にエースといえるぐらいの活躍をしていた。チームトップの勝ち星の9勝、防2.21も主な先発陣の中ではトップ、QS率73.3%で非常に安定していて、まさに孤軍奮闘・獅子奮迅の活躍だったと言えるだろう。

濵口と井納はローテを守ったが…

この大貫に続いて先発ローテに定着していたのが濵口と井納だったが、濵口はローテに定着していたもののなかなか安定しなかった。1試合平均の投球回が4.9回という数値で5回を切っており、防御率も4点台、QS率は僅か18.8%となっている。井納は8月までは比較的安定していたが、ベテランゆえのスタミナ不足か9月以降は打ち込まれる試合が増え、防御率3.71 QS率46.7%とやや不安定な成績になってしまった。

不安定だった他の先発達

他の先発だと、上茶谷は7月後半から昇格して以降、ローテに定着しているが、防御率4点台でQS率も50%を切っており、好投する時もある反面不安定な投球にもなっている。ルーキー坂本は開幕6戦目に登板後に怪我で長期離脱していたが、9月から戻ってきた。だが防御率5点台、QSは最初の1試合のみで6イニングまでの投げ切りが課題になっている。同じく9月から1軍昇格した京山も、やや不安定な投球でなかなか長いイニングを投げれていない。外国人のピープルズも同様で、6イニング投げれるかどうかという状態で9月中盤から2軍落ちしている。

1番の誤算 今永・平良の怪我

怪我組の今永・平良に関しては2人とも怪我前までは非常に安定していたが、今永はとうとう左肩の手術を行うことになり、来季開幕に間に合うかどうかというところだ。平良は10/15におよそ2ヵ月ぶりの復帰登板を果たしたが、2イニングで交代となっており、かなり慎重な起用になっている。この2人が復活しないことには、来季の投手運用も厳しくなりそうだ。

伸び悩みの若手投手陣

今季は阪口・櫻井・中川ら若手投手の1軍先発もあったが、3人共良い結果を残せず2軍落ちした。彼らはまだ若く、今後また期待できる投手たちだが、早くチャンスを掴み1軍定着することを願っている。高卒投手の伸び悩みもDeNAの課題になっており、彼らが台頭することで投手陣が盤石になるので、球団の育成体制も含めて改善を期待したい。

以上の通り、今年は大貫以外は皆不安定な内容で、大貫頼りになっていた。怪我など不運な部分はあるが、長いイニングを投げれる先発が少ない。この辺りは継投が早めの采配も影響していると思われるが、実際ほとんどの先発陣は5,6回でいつも崩れており、勝ちに行くとしたら早めの継投になってしまうのだろう。リリーフに信頼を置いているからこそ、このような継投ができるのかもしれないが、リリーフへの負担を考えると先発がもっと長いイニングを安定して投げれるようになるのは必須だ。

先発の頭数を揃える指名

今季は5試合もリリーフが先発するブルペンデーがあり、先発の頭数が足りているとは言えない。故障など不運なことがあったにせよ、それを補う投手をもっと増やす必要はあるだろう。ドラ1級を指名するか、昨年のように2位で指名するかは分からないが、上位で先発投手を1人指名するのは確実だ。

 

リリーフ

救援防御率リーグトップ

リリーフ陣は安定していて、防御率はリーグトップになっている。シーズン途中から抑えを任された三嶋は41試合登板で防御率2.88・15セーブとまずまずの安定感だ。三嶋への繋ぎ役となるのはエスコバー、石田、パットンらで、エスコバー防御率1点台、石田は3.00だが、今シーズンは21試合連続自責点0という記録も残した。パットンは防御率4点台だが1度先発した時に9失点した影響が大きく、リリーフのみの防御率は石田とほぼ同じになっている。以上の4名が40試合以上登板しており、セ・リーグの登板数ランキングTOP10に4人共入っている。(エスコバー1位、パットン2位、石田・三嶋10位タイ)

この他、国吉と平田が30試合に登板して防御率3点台前半とまずまずの安定感になっており、中継ぎとして健闘が光る。また新人の伊勢が20試合以上登板して防御率1点台と抜群の安定感を見せており、来季以降はシーズン通してフル回転が期待できそうだ。

山﨑康の誤算

安定したリリーフ陣だが、今季の最大の誤算は抑えの山﨑康の不調だった。ルーキーイヤーからずっと抑えで毎年安定した結果を残し続けてきた山﨑康だが、今季は開幕時から不安定な投球が続き、それがなかなか改善されずついに7月中旬に抑えを外された。その後中継ぎで起用が続いていて、抑えの時よりは多少安定するようになったものの、打ち込まれる試合もよくあり、防御率は5~6点台を彷徨っていた。そして10月に入り、とうとう2軍落ちとなった。山﨑康にとっては怪我以外での降格は初の経験で、キャリアワーストのシーズンを決定づけることとなった。山﨑康は今オフにメジャー挑戦の意向を示していたが、この成績ではまず挑戦は無理だろう。来年も残留は確実でDeNAにとってはある意味安堵することでもあるが、それは来年山﨑康が復活しなければ意味が無い。本人としてもプロ入り後最大の難関に来ていると思われるし、ここを乗り越えられる姿を見せて、来年オフに大手を振ってメジャー挑戦できるようになってほしい。

抑え問題は保留か

今季始め頃は山﨑康のメジャー挑戦がオフにあるということで、ドラフトでは次期守護神候補の指名があるという予想もあったが、山﨑康の不調と三嶋の台頭で来季以降も三嶋が守護神を務める可能性が高くなった。山﨑康が仮にメジャーに行ったとしても、今のままなら三嶋が抑えで問題無いだろう。三嶋は今年30歳で、あと何年かは安定して任せることができそうだ。

外国人のエスコバーは昨年オフに2年契約を結んでおり、来年も残留が確定している。ただパットンは今オフで契約が切れるため、去就がどうなるかは気になるところだ。今季はチーム2番目の登板数でフル回転しており、緊急時の先発も経験した。リリーフとしての防御率は3点台前半で一時期ほどの安定感は無いもののまだまだ右のセットアッパーとして重宝されている。年俸が16000万というやや高めではあるものの、できれば残しておきたいだろう。

リリーフ指名は1人か

現状、山﨑康の不安などがあるものの安定しているのは間違いない。ルーキーの伊勢が活躍しているのは将来的に好材料だし、昨年に比べると不安材料は減ってきた。こうなると先発や野手の方が不安材料はあるので、そちらを優先した指名になる可能性が高い。ただ、リリーフ陣は30代前後で固まっており、若いリリーフがまだまだ少ないことを考えると1人は指名する可能性もあるだろう。

 

野手

打撃成績はリーグトップクラス

10/20時点でチーム打率リーグ1位、本塁打数リーグ1位、得点数リーグ2位、出塁率リーグ3位、長打率リーグ1位、OPSリーグ2位と、打撃に関する指標は軒並みトップクラスになっている。今年は特に打率が良く、前年に本塁打のみでしか得点できないとまで言われていた詰まり気味の打線が、今季は2桁安打の試合が50試合もあり、こちらもリーグトップの数になっている。やや懸念があるとすれば盗塁数と犠打数がリーグ最少だが、これは足の速い選手が少ないことや、打線の特性や采配によるもので仕方ない部分もあるだろう。この采配に不満を持つ人も少なくなかったが、完封負けの試合はリーグでは平均的な方で、犠打や盗塁が少ないからと言って特別打線の波が激しいわけでも無かった。

確固たる3人のレギュラー

今季の高打率の象徴として挙げられるのが佐野・梶谷・宮崎の3人で、特に佐野と梶谷に関しては昨年までとうって変わって素晴らしい成績を残した。佐野は昨年は主に代打など控えにいることが多かったが、筒香がメジャー挑戦したことにより開幕前から4番・レフト・キャプテンの大任を任され、その役目を期待以上に果たした。10/20現在打率・安打数はリーグトップ、本塁打は20本でリーグ7位、打点はリーグ5位、OPSはリーグ7位と主要な打撃指標はほぼ全てリーグ上位に入っている。10/20まで全試合開幕スタメンを継続していて、もはや誰もが認めるDeNAの4番打者と言えるだろう。まだ25歳と年齢も若く、レフトに関しては今後5年間は佐野がしっかり定着するポジションとなることを期待したい。

そしてもう1人、誰もが認める1番センターとなったのが梶谷だ。梶谷は一昨年、昨年と怪我や不調などでレギュラーから外れていたが、今季は3月のオープン戦や練習試合の時点から結果を残して、開幕が延期になってもその調子を維持し続けた。開幕後も目立った不調時期はほぼ無く、毎月OPS.800以上を維持して9月には月間MVPも受賞した。今季は8月に佐野、9月に梶谷という、まさにDeNAの今年の打線を象徴する2人が連続で受賞することとなった。現在リーグで打率3位、本塁打8位、得点1位、盗塁5位、OPS5位となっており、積極的打撃の1番打者として大活躍している。ラミレス監督が「日本で1番の1番バッター」と評するほど、首脳陣からも信頼される打者となった。

梶谷は今季FA権を取得したことで、オフの動向が気になるところだが、来年33歳ということを考えれば残留する可能性が高いと思われる。ただ、今後はやはり年齢との戦いになることは間違いなく、特に守備面でセンターを守り続けることができるかは不安なところだ。今季は神里がシーズン途中から1軍昇格し、後半戦から成績を上げて結果を残している。神里は昨年センターでレギュラーだった選手だし、仮に梶谷が守備面で不安が増してきた場合でも、神里が入る形にはできそうだ。

今季台頭した佐野・梶谷と同じくらい活躍した選手が宮崎で、こちらはもう実績十分の打者だ。今季は主に佐野の後ろの5番を任されており、打率3割を切った日は1度も無く、本塁打も14本で、OPS.800以上という成績を安定して残している。サードの守備も堅実で安定しており、まだまだ宮崎に代われるような選手はいないだろう。来年でもまだ32歳なので活躍を十分に期待できるが、万が一宮崎が故障した場合などに代わりになる選手が今のところ見当たらず、後継者候補を今のうちから育てておきたいところだ。

波が目立った外国人コンビ

一昨年・昨年と2年連続で本塁打王のタイトルを獲得していたソトは、今季は不調期間が長くなかなか安定した成績を残せなかった。特に7月の月間打率は.219、9月、10月の現時点(10/21)でも打率.250を切っており、打てない時には三振かホームランかというような状態だった。それでも9月以降に本塁打を増やしていき、リーグ6位のホームラン数となっている。3年連続本塁打王の獲得はかなり難しくなったが、まだまだコンスタントにスタンドへ放り込めるパワーはある。

今季キャンプイン時から注目を集めていたのが、新外国人のオースティンだ。メジャー経験があり当初は筒香の穴を埋めるホームランバッターと注目を集めていたが、反面三振の多さも注目されていて、成功するか失敗するかの議論が絶えなかった選手だ。そのオースティンだが、色んな意味で注目を集めることになったシーズンと言える。開幕前に怪我をして開幕カードのスタメンは無かったが、2カード目からスタメンで起用されるといきなり猛打賞・本塁打と活躍して結果を残した。三振は確かに多めだが、四球を選ぶこともできていて佐野へ繋ぐ3番打者として十分な結果を残した。

しかし大きな欠点があり、怪我が多かったことだ。守備では全力プレーを何度も見せるものの、フェンスに激突しながら捕りに行ったりと怪我を恐れぬプレーが多く、見てる側としてはひやひやするプレーが多々あった。そしてその影響で7月に2週間近く2軍落ち、8月には1ヵ月以上2軍落ちするなど、どちらも怪我由来の抹消となって、せっかくの打撃が1軍で発揮できなかった。9月中盤からようやく1軍に戻ってきて、コンスタントに本塁打を量産して活躍しているが、活躍すればするほど欠場期間がもったいなかったと思ってしまう。実際、本塁打数はリーグ10位だが、本塁打のペース(打数/本塁打)はリーグでもダントツで、怪我さえなければ十分タイトルを狙えただろう。これほど結果を残したことでオフに再契約は確実と思われるが、来季は怪我を無くしてレギュラーでしっかりタイトルを獲れる活躍を継続して欲しい。

併用で凌いだショート、来季の課題

昨年までのショートのレギュラーだった大和は今季で32歳を迎え、年齢的に好成績を維持したまま出続けるのは難しくなると考えられていて、当初は柴田との併用起用されていた。だが7月中盤になるとここで倉本が打撃で結果を残し始め、マルチ安打や本塁打などで一気に打率3割に到達。守備面でも昨年までの不安さは消えて、フットワーク良く安定したプレーが見られることから、一気にショートのスタメンで起用される機会が増えた。大和も打率2割台後半を維持しており、併用が上手い形でハマったと言えるだろう。ただ大和は来年33歳、倉本は来年30歳で、メインのショート2人が30歳超えとなる。今季は他にショートで起用された選手が柴田ぐらいで、その柴田もセカンドとの併用な形で来年ソトがファーストにまわれば必然的にセカンド固定されるだろう。百瀬や知野がまだ1軍で結果を残すに至らず、森や田部といった高卒ルーキーもまだまだ昇格を考える段階ではないなどを考慮すると、大和・倉本が来年今季ほど結果を残せなかった場合の代わりがいない。今ドラフトではショートの補強が重要になりそうだ。

ロペスは来季は代打要員か

外国人選手ながらDeNAに6年も在籍し、高打率・安定した本塁打、そして好守の一塁手として活躍し続けたロペスだが、今年は36歳となり流石に衰えが見えてきた。打率は.250前後  本塁打は2桁に載らず、OPS.650前後、守備では素人目にも狭い守備範囲となっている。レギュラーとして出続けることはもはや厳しく、休み休みでの起用や控えに徹する形での起用になるのは避けられないだろう。ただ、ロペスは今季このまま一軍登録され続ければ来季日本人登録となり、そうなれば外国人枠に関係なく1軍に帯同させることができる。今季の成績では1軍も難しいが、代打に徹すれば負担が減り調整もしやすくなるため、好成績を残す可能性も出てくるだろう。来季の一塁手はこのままいくとソトかオースティンになりそうだが、その中でロペスは代打要員として好機で結果を残せれば、まだまだDeNAにとって必要な選手になってくる。

キャリアハイの活躍をした柴田

柴田がいよいよレギュラーとして定着しそうだ。今季はセカンド・ショートを守っていたが、守備に関してはもはやチーム随一の選手と言っても過言ではなく、あとは打撃面での結果のみだった。しかし今年はその打撃でも結果を残し、打率は2割台後半、出塁率は.350前後、OPS.700超えという結果を残している。打率・出塁率OPSは現時点で自己最高の成績となっており、年齢も来年で27歳とプロとして最も結果を残しやすい時期に入ってくる。来季、ソトがファーストで起用される機会が増えるのは間違いなく、ショートも大和・倉本が2人とも安定した状態とは限らない。となると二遊を両方守れる柴田の存在は非常に重要になり、大きな飛躍の年となる可能性はとても高いだろう。怪我無く過ごせれば規定打席到達も夢ではなくなる。

数は多いが物足りなさのある捕手陣

今季は当初は昨年までと同様に伊藤光がメインで起用されると思われたが、戸柱が平良・大貫などと組んだ時の相性が良く好成績を残していた。また戦力外から再獲得した高城も濵口専用で起用されたり、リリーフ陣には嶺井を起用するなど投手によって捕手を変えることがとても多かった。しかしその中で伊藤光や嶺井がリード面でなかなか首脳陣から評価を得られず2軍落ちとなったり、高城も濵口とは組んでいたが、それ以外の投手と組まされることが少なく、実質的には戸柱がメインで起用されることとなった。戸柱はリード面や盗塁阻止率などの評価が高く、打撃面はあまり結果を残せてるとは言い難いが守備面で評価され重宝された。今季、戸柱が重宝されたことでファンの間でも議論が起きていたが、捕手に関しては他のポジションと異なり守備面が重視されやすく、特にリードを重視するラミレス監督にとっては戸柱が1番自分の采配を揮う上で適していたということだろう。無論、打撃面も当然評価の対象だったと思うが、ここまで戸柱が起用されていたことを考えると、逆に言えば攻撃含めた総合力で突出している捕手がチーム内にはいないということだ。

2軍では山本・益子・東妻ら若手捕手陣が育成されていて、山本などはもう攻守で2軍を卒業できるレベルまで来ている。今季は1軍起用機会が現時点では無いが、来季からはもう1軍の現在の捕手陣の争いに割って入っていける期待があり、強打・強肩の山本が1軍に上がれば良い刺激になるだろう。益子・東妻は来年も2軍でしっかり経験を積ませて育てたいし、今のところドラフトで新たに捕手を指名する必要は無さそうだ。

 

指名傾向・優先度

これまでの方針と昨年の指名の違い

横浜DeNAは親会社が変わった後のドラフトでは毎年投手・野手問わず大学生・社会人中心の指名になっている。特に投手に関しては徹底していて、2014~2018年までのドラフト1位は全員大学生投手になっている。これによって投手陣の立て直しが行われてチームも最下位の球団からAクラス常連の球団へと変貌を遂げることができた。

そうしていった中で、一昨年からドラフト1位指名に変化が出てきた。2018年は入札1位指名で高校生遊撃手の小園を指名した。こちらは残念ながらクジを外して獲得はならなかったが、翌2019年は同じく高校生遊撃手の森を入札1位単独指名して獲得した。今まで大学生投手をずっと指名してきたDeNAだったが、Aクラスに定着したことや投手陣が整備されてきたこともあって、即戦力では無く数年先を見据えた指名に切り替えられるようになってきたと言える。

この即戦力投手に拘らない基本方針の変化は大きな方針の変化として考えられ、一昨年までのように「DeNAは1位で大学生投手」となるとは限らなくなってきた。今後は現時点での成績だけで指名を決めるのではなく、将来的に穴となりそうなポジションや選手層に気を配った指名になるだろう。でなければ昨年のような指名にはならないはずで、ドラフト戦略を非常に重要視しているDeNAは、今後は中長期的視点で指名を考えていくことになるだろう。

現在の優先度

上記を踏まえて現在最も優先すべき指名がどうなるかだが、今後確実に必要になり補強を優先すべきポジションは先発投手遊撃手だ。これはどのチームにとっても言えるが投打の核となるポジションで、どんなに戦力を有しているチームでもこの2ポジションが揃ってないと不安定になる。とりわけDeNAはこの2つが特に重要で、それは球団側も非常に重要視していることは明らかだ。だからこそ今永・濵口・東・上茶谷と4年連続先発投手を1位指名してきており、遊撃手も倉本・柴田を3位で指名し、大和をFAで獲得してきた。昨年の森・田部も遊撃手で次世代の1軍遊撃手として期待が込められており、先発も遊撃手も他のポジションと明らかに重要度が異なっている。

ここまで書くと、では今までそうしてしっかり指名や補強をしてきたのだから、もう必要ないのでは?と考える人もいるだろう。しかし現実を見て欲しい。先発は充実してると言えるか?遊撃手はこの先も安泰か?

戦力分析の箇所でも記載したが、今季は先発起用に大いに苦しんだ。今永・平良の故障や、昨年東がトミージョン手術をした影響もあるが、それでも安定した投手が少なく、頭数が足りなくてリリーフ投手が先発した試合が5つもあった。これは明らかに足りていない。来年、今永・平良・東が全員復帰してローテに入るかもしれないが、それは希望的観測に過ぎず、安定するまでは先発の指名をしていくべきだろう。昨年、高校生遊撃手の森を1位指名したが、2位でしっかり大学生投手の坂本を指名している。坂本は今季いきなり怪我で離脱したものの、10/21時点で先発として8試合に登板しており、1年目から必要とされている。1位に拘らずとも、上位ではまだまだ1年目から投げれる先発が必要な状態で、優先度は高い。

ショートに関しては大和・倉本・柴田といるが、逆に彼ら以外に今1軍でショートを守れる選手がいない。3人いればシーズン通して誰かしらショートを守ることはできるかもしれない。だが、その場合セカンドはどうなる? 来季はソトが一塁スタメンで起用される可能性が高く、今季すでにロペスの代わりに一塁で何度も出場していた。つまり柴田をセカンドで起用するなら、ショートに新しい選手が必要で、柴田をショートで起用するなら、セカンドに新しい選手が必要なのだ。セカンドに関しては2軍で伊藤裕がいるので大丈夫という意見もあるかもしれない。しかし、今季だってすでにロペスが不調でソトを一塁で起用していたことから、伊藤裕の出番はあったのだ。しかし結果が残せず2軍降格した。もし来年も今年のように1軍にあまり上がってこれなかったら、更に内野の運用は困難になるだろう。中長期的視点で言えば、宮崎の後釜候補だってそろそろ欲しい。伊藤裕がセカンドで定着しても、サードを守れる選手がまた必要になるのだ。伊藤裕がいるから大丈夫、というのは楽観的過ぎる考えと言える。厳しい言い方になってしまったが、それだけ二遊間は今ドラフトで重要視しなければならない。

結論を言うと、今ドラフトでは先発投手と遊撃手の補強が最も重要になる。

 

入札1位指名予想

牧 秀悟(内野手・中央大)

牧はセカンドを守る内野手で、今ドラフト候補の中でもバットコントロールが非常に優れていて宮崎とよく似た打撃ができている。広角に長打を打てる技術とパワーを備えており、このどちらも今ドラフトでトップクラスだ。打撃では近大の佐藤が複数球団の競合確実と言われるほど注目を集めているが、DeNAの河原スカウトは牧の打撃に関しても「佐藤と同じくらいのところにいる」とコメントしており、DeNAの中では佐藤と同等の打撃と考えられていそうだ。守備面では元々ショートだったのがセカンドに移ってきた形だが、ショート経験があるためフットワーク良く肩もなかなか強い。DeNAの河原スカウトも二塁を十分に守れるとコメントを残しており、プロでも問題は無いだろう。

さて、先ほど遊撃手の補強が最も優先度が高いと書いていたが、それなのにセカンドの牧を1位指名予想にしたことで、何故かと疑問に思う人もいるだろう。しかし牧を指名することが、ショートの補強に最も適した指名となると自分は考えた。その理由としては、牧を獲得してセカンドに定着できれば、ショートに柴田を定着させることができるからだ。これはドラフトで即戦力候補のショートを獲得するよりも、よっぽどショートの補強となる。柴田の守備に関しては今更言うまでも無いが、ショート守備でも十分名手の領域で不満を持つ者は少ないだろう。今季は打撃成績を上げてきているし、チーム内でも着実に力をつけてきている選手だ。この柴田を来年ショートでも起用できるようにすれば、大和・倉本が衰えてきた場合でも問題なく柴田に移行できる。そしてセカンドに牧が入ればむしろ今よりも強固な二遊間になるだろう。

伊藤裕が台頭してくれば、セカンドで牧と競わせても良いだろう。宮崎が来年32歳ということを考えれば、宮崎が不調の時にどちらかがサードに入る形でも良く、将来的にサードの後継者となれば万々歳だ。大和・倉本だってそう簡単には衰えまいと、ショート以外のポジションでも頑張るだろう。倉本は今季セカンド、サードも守ったし、大和もセカンドを守った。牧を獲得することで、誰がどのポジションでもレギュラーを獲るチャンスを持てるようになり、競争効果は今よりも増す。こういったことは今までのDeNAには少なく、それこそが首位巨人との差になっていた。牧を獲得することで高いレベルでの競争が生まれ切磋琢磨しあう環境にもなる。牧を獲得することでこのようなメリットが生まれることも、1位指名すべき理由の1つになるだろう。

単独で狙いやすいからとか、クジを避ける球団だからとか、そんな消極的な理由で指名するのではなく、今のDeNAにとって最も重要なポジションで、そこで最も活躍できる可能性があり、尚且つチームにとっても良い影響を与えることのできる選手が牧なのだ。

 

その他1位指名候補

元山 飛優(内野手東北福祉大

仮に牧が競合してクジを外した場合、また万が一牧以外の野手を指名するとするなら、元山が次の候補になってくるだろう。元山は牧ほどの打撃はできずバットコントロールもパワーも磨く必要があるが、代わりにショートの守備が非常に優れていて、守備範囲の広さ・肩の強さ・送球の安定感をどのスカウトも評価している。打撃についても、今はまだ課題があるものの伸びしろは十分あり、プロで使っていけばいずれレギュラークラスの力を身につけられると評価するコメントもある。元山が入ってきた場合はショートで大和・倉本らと競わせる形になるだろう。それによって柴田をセカンドに定着させることができ、守備面ではかなり堅い二遊間になるはずだ。牧とは役割が異なるものの、二遊間を安定化させるという目的を遂行するのには一致しており、こちらも今のDeNAに必要な選手と言える。

 

入江 大生(投手・明治大)

牧を指名してクジを外した場合、もしくは仮に投手で入札1位指名で行く場合、大学生右腕の入江を指名すると考えた。身長は187cmと長身で、最速153kmの直球を投げ下ろす非常に球威のある投球ができる投手だ。4年春までは球威がありつつも軸が定まらずに制球面で課題があったが、この秋には安定感が出て視察したスカウトはその変わりぶりに見違えていた。今の球威と安定感は大学生右腕の中でもトップクラスだろう。変化球もスライダー、カットボール、フォーク、カーブなどを使い、直球とのコンビネーションで奪三振能力が高く、抑えを任せられていたこともあるほど球の質が良い。

DeNAは先発投手が必要だが、今季は大貫や平良など球威で押すというよりは制球やキレで抑えるタイプの右腕が台頭してきている。左腕が今永や東が戻ってくると仮定しても、右腕でも球威で押せるタイプは欲しいところで、入江はそれに当てはまるタイプだ。個人的には1位指名でも文句のない投手だが、仮に2位まで残っていて指名できれば非常に美味しい指名と言えるだろう。先発の層を厚くするためには是非とも欲しい。

 

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